政治・経済・社会
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提言 政治・経済・社会

更新日:2013年4月3日

復興の加速策
 新政権になって、被災地の復興は加速されるのか。
 確かに総理指示でいくつかの加速策が示されたし、現場では、たとえば農地の買上げがしやすくなったなどの声も聞こえる。
 しかし、これまで民間の立場で復興支援にたずさわってきた立場から言えば、せっかく復興加速を新政策の目玉の一つにうたっているのに、これではもの足りないというのが正直な感想である。
 もの足りないのは、おおむね行政官僚がやれる事柄に止まっているからである。復興予算枠6兆円の積み増しも、必要なことが目に見えている額を、官僚が出した財源の範囲で調達すると言ったまでのことである。
 そういう官僚の智恵でもやれることではなくて、政治しかやれないことをやってほしい。
 それは、国の官僚の権限をはく奪し、地方自治体に大幅な復興裁量権を与えることである。
 たとえば、復興資金の交付。復興にお金がかかることは分かっているのだから、国が総額20兆円出すと決めたら、被災人口割で市町村に枠を配り、あとは市町村に任せればよい。それを40事業のヒモ付きにして査定するから、市町村は多めの見積りで分取り合戦に走るし、ヒモが付けられない事業が必要であっても後回しになったりする。そうでなくても事務過多にあえぐ被災自治体の職員が、予算書の作成事務に追われる。
 地方自治体が適正に事務を行う能力に対する疑念が基本にあるのであろうが、どんと任せば、住民も地方議員も行政職員も真剣に復興の全体像とお金の使い方を考え、それが住民にとってもっともよい復興をもたらすように、予算にも執行にもきめ細かく目を光らせるであろう。今から抜本的に改めるのは難しいが、この段階で政治が行政職員を使わずに復興資金の配分を見直し、地方自治体の裁量の幅を広げる措置を講じてほしい。
 たとえば、許認可権限。国は復興特区制度をつくり、ある程度手続きを簡略にしてはいるが、それにしても許認可の権限を握って放さない。
 しかし、農地の確保を基本的目的とする農地法の規制を、この耕作放棄が行われている時代、沿岸被災地域の細々とした農地に適用する意味があるのか。それよりも、その土地が被災住民の生活再建にもっとも役立つように、転用、売却、購入、利用などを自由に認めた方が、よほど土地が有効に活用され、円滑な復興をもたらすのではなかろうか。
 被災市街地の復興については特別法があるが、今回の大震災では津波被災地には人は戻らず、その周辺を開発して居住ゾーンを新設することになる。そこに、平時を前提とする都市計画法その他もろもろの土地・建設関係法による開発行為、建築行為その他規制を行うのは、たとえ手続きを簡略化しても、意味のないことが多い。沿岸部の限られた土地を、限られた人数の被災者のために、緊急に開発し、そこで暮らせるようにしようというのである。いちいち許可や承認をして「都市の健全な発展と秩序ある整備」を図らなくても、地元の自治体は、被災住民が暮らすのに必要なことしかしないし、乱開発をする者が出るような場所ではない。任せればよい。
 森林法の規制も同じである。現地は防災に充分意を用いつつ、必要最小限の行為しかしない。
 自然公園法や景観法の規制も被災地域に適用するのはナンセンスだし、文化財保護法も、今さら貝塚などに適用するのは時間の無駄であろう。
 民主党政権が打破できなかった官僚の権限保持本能という壁を、彼らを使わず政治の力で破り、無意味な規制を大胆にはずして、復興をスムーズに進めてくれるよう願っている。

(「ウエーブ」電気新聞 2013.3.5掲載)

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