政治・経済・社会
(財)さわやか福祉財団ホームページへ
 
提言 政治・経済・社会

更新日:2013年4月24日

アジア民主主義国家連合
 北朝鮮は何をするかわからない。韓国やアメリカ、日本などからいろいろな人道支援を受けてきたこともすっかり忘れて、賊扱いである。
 尖閣諸島領海における中国のふるまいも、軍事衝突への発展を拒まないかのような無謀さである。中国は、南沙諸島でも武力による威圧を重ねており、危険な覇権国家の本性を示し始めている。軍事力が米国のそれに近づいた時の態度が心配される。
 日本が日米同盟を強化するのは当然であるが、集団的自衛権の容認は、日本にとっては一大問題であるにしても、アメリカにとってそれがどれだけ歓迎されることかはわからない。オバマ大統領は、それよりも衝突の危険を避けることに大きな関心があることが、この間の総理訪米で明らかになった。
 それでは、これから何年も、あるいは何十年も、尖閣諸島の周辺でお金のかかる神経戦をやり続けていくのだろうか。それはとてつもなく暗く非生産な事態である。これを打開する智恵は、官邸からも外務省からも出ていない。
 国際司法裁判所も国連も解決能力がない以上、日本は腰をすえて、世界の国々、特にアジアの近隣諸国の理解と協力を求めていく努力を続けるのが王道だと思う。その際、問題を尖閣諸島の事態に絞ったのでは、強大な隣国である中国を相手に、諸国はひるむであろう。
 私は、アジアの民主主義国家の連合を目指すのがよいと思う。
 ASEANを始めいろいろな国の連携があるが、その主なキーは経済であり、環境である。これに対し、人道(人権擁護)や、市民の自由(思想、表現、移動、投票など)を守り、文化や教育のレベルを上げるための連携を結んでいく。そして、たとえば国民の知的レベル(識字率など)や民主化のレベル(各種差別の廃止度と実績など)が一定の基準に達し、相互の国民の自由な移動、定着が認められるところまで達すれば、EU諸国のような特別な連合関係に入る段階に進めばよい。そういう関係を目指して連携を結んでいく。
 たとえば日本とオーストラリア、ニュージーランド、マレーシア、シンガポールなどは、そのレベルに近づいているのではなかろうか。
 韓国や台湾、フィリピン、インドネシア、インドなども、かなりの勢いで実質的な民主化の度合いを高めている。
 もちろん中国や北朝鮮は大いに反発するであろう。だから民主主義という言葉は使わないとか、台湾については特別に対応するとか、細かい配慮は必要である。
 持ち出す目標や基準は、歴史上その価値を否定できないもの、たとえば、人種、性別、言語や宗教による差別の禁止や、基本的人権及び自由の保障などに限るものとする。たとえば投票の実質的自由の実現度を計る基準としては、政治家の汚職率などが考えられる。どの国も、汚職がはびこっていてもよいなどという主張はできないと思うからである。
 そのように、人権の保障や自由の確保、教育レベルや文化レベルの上昇を目指して民主主義国が協力し合うことは、国民どうしの絆を深め、国どうしの平和な協力関係を高めるのに直接的に役立つであろう。
 そして、先輩民主主義国であるアメリカがこの連携に加わることは大歓迎であり、そうなれば、アメリカに対し銃器所持の自由度の行き過ぎなどの是正を求める機会も増えるであろう。 
 そして、中国や北朝鮮の国民が、民主主義国家連合の価値観をうらやみ、これを求めてこの連合体に加わろうと努力してくれれば、これに勝る平和の確保手段はないのではなかろうか。
 遠い道であっても、国と国民が目標を持って外交活動に努めることが必要だと考えている。

(電気新聞「ウェーブ」2013.4.22掲載)

バックナンバー   一覧へ
 [日付は更新日]
2013年 4月 3日 復興の加速策
2013年 4月 3日 集団的自衛権の中身を詰めよ
2013年 1月17日 【特別寄稿】 パワハラをなくすために
2012年12月 5日 情報の力
2012年11月22日 人の「認識」どう認定するか
  このページの先頭へ
堀田ドットネット サイトマップ トップページへ