日本を追って、しかも、日本の少子・高齢化の進行は今まで先進国の中でトップのスピードで進んできたが、韓国も中国もそれを上回るスピードで少子・高齢化が進みつつある。それで、大変におこがましいのだが、私はもう3、4年前になるが、マドリード(スペイン)で世界の第二回高齢者問題の大会があって、世界のNPOが集ったが、そこで、アジアにおける高齢化の経験を分かち合おうというので会を呼びかけて、いろんな国の方が参加してくれた。
そのときまでは私はこう考えていた。
日本の少子・高齢化はもちろん韓国や中国よりは、2〜30年先に進んでいる。それで、高齢化対策について日本は失敗したと私は思っている。現在は世界の中では最高のいい対策をとっているのだが、日本は一度経済成長の方にもう国力のすべて、国民の力のすべてが行ってしまって、そういう意味ではすばらしい経済成長をすごいスピードで遂げたのだが、いったん経済成長を遂げて経済大国になった、このときに、みんながすごい勢いで競争したので周辺の人が競争相手になってしまい、それまでの温かい助け合いのコミュニティーが壊れてしまった。特に都市部では完全に壊れてしまって、そういう共助が消滅してしまった、ほとんど。そして、自助と公助だけになってしまった。
で、そこからまた、いや大変だというので、高齢化が進むというので、公助の方でいろいろ手を打ち出した。だから介護保険制度もつくり、公助の仕組みはなかなかそれこそ世界トップのいい仕組みをつくってきたが、公助だけだとものすごいお金がかかる。税金をいっぱい納めなくてはいけない。その前に自助ではやれない共助があって、かなりの部分がここの助け合いの仕組みでやわらかくあればそこで結構安心できて、そんなに税金をたくさん放り込まなくても、ちょっとした近所との助けあいでやれるものが多いわけだ。いまはそれがないからだれか倒れたら救急車を呼ぶしかないし、近所に助けてなんていうのもないし、ヘルパーさんだって、隣の人にうちに助けにきてもらうとか、誰か子守に来てもらうということもないんで、何かしてもらおうと思ったらヘルパーさんに来てもらうしかない。これが全部お金がかかる。
一度経済発展だけに注力して、コミュニティーを壊してしまって共助をなくしてしまってそこからまた復活しているから大変な手間とエネルギーがかかっている。これはもったいないので、なんとかコミュニティーを壊さず、いろんな助け合いもしながら経済も発展させる。今の韓国も中国ももう日本の20年前、30年前と同じで、金を稼ぐことに必死で、いかに経済成長するか、いかに自分がお金持ちになるか。日本がどんどんコミュニティーを壊して、経済競争一本にしていった、その段階そのものだ。
これはもったいないので、なんとかもっと助け合いを壊さずに、しかも経済発展ともうまく合うような、そういう社会の作り方ができないだろうか。そういう点で、失敗者としてアドバイスできれば、彼らは余計な回り道をしなくて済むだろうと。大変おこがましいが、そういうことを考えてアジアに対する呼びかけをしたりいろいろやってきた。経済成長が乏しいときはお金がほしいし、なかなかむずかしい課題ではあるのだが。
ただ、私が感心しているのは、韓国も中国も、みなさん介護保険もないし、いろんな年金だって、日本よりずっとずっと低い。中国などごく限られた共産党の人たちしかないし、非常に経済的条件は遅れている。そういう整備は、日本よりも、日本の過去の発展段階にくらべても、特に中国などは遅れているが、その代わり私が本当に感心したのは、やっぱり自分たちでやろうという自助の精神だ。これがすごく強い。
だから、あまり介護保険などの話をしても、中国など特にそんな夢のような話できないでしょうと、期待もしていない。その代わり勉強する機会がほしい。それによって能力をつけて稼ぎたい。いくつになってもだ。そういう意欲がすごく強い。韓国も同じだ。
日本では我々はまず自助、自立ということが大事と言い続けてきたが、そういうことを言っている我々だって結構甘えている。そこは大きな反省だ。精神的に、政府は何している、もっと制度つくれ、介護保険のここがおかしい、医療保険制度のここがおかしいという、そっちの方へわぁっーと行っている。韓国の人たちも中国の人たちも、そんな、もう全然、マドリードで会ったフィリピン、インドネシア、タイ、マレーシア、そんなこと全然、だから、我々が介護保険を説明しても全然興味がない。してもらおうなどと思っていない。自分たちでやろうという。その意欲がすばらしい。
だから共助を言おうと思ってきたが、まずその前段の自助がすばらしい。自助の意欲があれば、自然に共助をするようになるのだ。 |