2006年ほどむずかしい年はないと思う。今までは大きな社会の流れ、世界的な潮流、それから日本における潮流それぞれがあって、もちろんいろんな流れがたくさんあるが、大きな流れとしては今こちらに向かっていけばいいというものが見えていたし、何とか頑張ってそちらに流れていくだろうということが予測できたし、その予測に立ってどういうことをすればいいということも言えた。
しかし、2006年は世界的な潮流としても、それが大きな世界主義、人類主義といったかたちで平和、そして戦争をなくす、経済的な交流を深めて政治的にはそれぞれの国の実情に応じて民主主義の方に向かって歩を進めるという、これが大きな流れで、そこに反する方に全体の流れが流れ出すおそれというのはまずは今まではなかったのが、2006年はいったいどうなるのか。
ブッシュさんがイラク戦争を始めた。戦争をやることがいいか悪いかはいろいろな立場で議論があるし、私はいいと思わないが、ブッシュさんとしてもこの戦争は、最終的には平和を目的としており、自由主義、民主主義を世界に及ぼすことを目的としていると言い切っている、彼は彼でそう信じてやった、その考え自体には間違いはなかったと思うが、2006年になって一体彼がその旗印をどういう形で実現するのか、そして、それを、彼の言っていた抽象的には正しい理念を現実にどういう政治手法、外交手法でやっていこうとするのか。
これは見えてこないし、ほかの国もまたその方向に進めるためにどう対応すればいいのかが見えていない。だから下手をすると、行き先わからずに、ナショナリズム、エゴイズムが出てしまって、分裂する方向に流れが混迷するというか、わからなくなる、そういう危険性が感じられる状況だ。
国内でいっても改革、これはまあずっと1990年代に入ってから改革、改革でやってきていた、国民も細川さんの日本新党を支持したときも改革を支持したし、いろいろあって、今度小泉さんを支持したのも改革を支持した。その改革とは活力、政官財の仕組みを壊して活力を見いだそうという、その流れ自体は正しかったと思うが。小泉さんはまず確実に退くと思うが、さて退いた後にそれでは改革を進めるのか進めないのか、進めるとしてどっちの方向に進めるのか。
それは何のためなのか、今まで改革を言ってきた民の活力というのを今後も維持するのかしないのか、したらどんなプラスがあるのか、そういう一番基本的なことについてすら合意ができていないし、流れも出てきていない。こういう状況の中で小泉さんが退いてしまうと、やっぱりその旧来の改革に反するいろんな権力、財力、社会力を持った人たちが、当然流れがなければ自分たちが復活するという方向に向けて本能的というか、当然の原理として生き返ってくる。すると、10数年にわたって改革、改革、改革ときたのが何だったのかということにもなりかねない。そちらに逆流する可能性も十分にある。そういう点で2006年というのは、非常に旗印というか、流れる方向が見えてこない、大変にむずかしい年ではなかろうかというふうに感じる。 |