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JANJAN映像メッセージ 発言概要
堀田力の新しいふれあい社会づくり
(2005年12月5日撮影)
No.5 「子どもと共に生きよう」(2)
●子どもを残虐な行動へ追い込んでいるものは何なのでしょうか?

 病気としかいいようのない子どもの場合もそうだし、病気までいかない子どももそうだが、結局自分を大切にしていないというか、偏差値教育が行き渡ってどんどん低年齢化して画一的基準で計って駄目と決めつけるものだから、犯行を冒す子どもたちというのはすべて自分はどうでもいいという、命がむしろどうでもいいというようになっている。結構自分を傷つけたり、自殺と、ああいう残虐な無関係な子を殺すのは紙一重で、殺せない子は自殺の方へ行くおそれがあるし、自殺ってこわいから、自殺できない子が人殺しに走ったりして、その前に動物を殺したりもしているが、いずれも心の闇というか、自分のことを大事にしていない。
  私が若かったころの少年事件というのは、カツアゲとか、やくざに入る子どもはだんだん減ってきたが、愚連隊などというようなものがおって、カツアゲをやったり結構悪い子はいたが、生きる意欲はあった。だからカツアゲしてその金で物を買って食べるとか、むしろ生きる意欲はムンムンあった。だから、うまく導くと、ころっといい方へ変わったりもしたが、それがだんだん無関係な人を殺したりするようになるにつれて虚無的になっていった。自分はどうでもいい、生きていても楽しいこともなにもないし、そういう競争社会のひずみが子どもを曲げてしまったのだと思う。自分がどうでもいいとなると人のことがどうでもよくなるから、やり方が残虐になりますよね…。

●「子どもの居場所づくり」に取り組んでおられのは?

  15年前にこの世界に飛び込んで新しいふれあい社会づくりでやってきて、最初は高齢者、高齢化がどんどん進んで、しかも介護保険も何もできてなかったから、このままでは日本社会はむちゃくちゃになるというのでまず高齢者を支えようというところから始めるとともにいろいろ仕組みづくりを訴えてきた。高齢者の問題はもちろん中身はこれからだが、仕組みとしては一応はできたと思う。それで数年前から子どもたちの心のゆがみを何とかしたいというので、子どもの方に重点を移してきている。それが私たちの子どもの居場所づくりだ。
  そこで子どもたちが自分たち自身でいろいろ遊んだりしながら自分の役割を見つけ自分の存在価値を見つけていくという、そこからかかろうとやっているが、それと合わせて教育についてとにかく管理しすぎなんだということを、ずっと私どもが子どもにかかる数年前から教育課程審議会などにも入っていろいろ主張しているのだが、教育者というか教育学の学者というのは教えることが好きなのだ。子どもを認めて子どもを伸ばすのではなくて、子どもに教え込むことが教育だという信念を持っているから、そして、その人たちが多数派で文部科学省に対する影響力も強いから、仕組みがなかなか変わらないですね。

●コミュニティのありかたについて

  昔のコミュニティはやくざに入っても暴走族になっても、村の親方的なやつがこの野郎ちょっと来いというように説教したり、愛情があったのだ。それがない今の社会での監視というのは本当に冷たい社会になるから、監視するためにこうするというのではなくて支え合うその中であなたも支えてあげるという、そういう包み込みだ。そういう社会になると少しは防げるかなと思う。

●在日外国人を地域にどう受け入れていったらよいでしょうか。

  受け入れて同化させる。地域の一員としての意識を持たせる。地域の子どもを自分の子どもみたいに感じるようになったら悪いことをやれない。自分の子に悪いことをやらないのと同じだ。外国人を冷たい目で見れば見るほど、元々差別で傷つきやすい、同胞意識を持たない、同胞意識がないと犯罪は残酷になる。日本人でも海外へ行って犯罪をやると残酷になる。日本人同士の場合はある程度限度がある。自分の知らない連中、コミュニティーの一員でないとなると、悪く走ったときにやはり残虐な犯罪になる。外国人は元々同化したくて来ているのだからますます受け入れてコミュニティーの一員にしていくことが大事だ。

●昔はどこでもガキ大将がいたものですが。。

  ガキ大将といじめは違う。ガキ大将はリーダーで結構弱い子を守り、自分らのルールでやっつけてきたが、結構彼らはコミュニティに対する愛情を持っていた。そうでないと大将として認められなかった。ガキ大将がいなくなったですね。訓練しているんですよ、子どもの頃から人の気持ちをつかむ。非行に走った子も早い段階で引き戻してガキ大将的にしていけば育つのだ。
  私は1990年代に児童福祉審議会の委員をしていたことがある。そこで学童クラブが問題になって、大学の教授たちが学童クラブの指導員を有資格制度にしようという提言をして、ぼくは一人で大反対した。とんでもないと。そんなことにしたら、子どもたちの逃げ場がなくなると。あそこには、非行少年の少年院あがりの更正したのをおくのが最適であるといったらみんな驚いてしまって、何たることをいうのかという感じだったが、あれは絶対正解ですよ。ガキ大将として役割を与えると非行少年は復帰するんですよ。

(インタビュアー(文責)/ジャーナリスト・元朝日新聞論説委員 大和 修)
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 [日付は更新日]
2005年12月13日 No.4 「子どもと共に生きよう(1)」
2005年11月21日 No.3 「地方からモデルをつくる」
2005年11月21日 No.2 「助け合いのネットワークを」
2005年11月8日 No.1 「小泉改革への注文」
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