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定期連載 挑戦−幸福づくり
更新日:2007年9月6日

地域支援事業を活用しよう

  介護保険法に定められた高齢者に対するサービスの体系は、骨格だけを整理すれば次のようになる。
   介護給付を受けるサービス
     予防給付を受けるサービス
     地域支援事業として行われるサービス

  予防給付を受けるサービス(介護予防サービス)は、受ける資格の認定が厳格すぎるため、期待されたほどには活用されていない。
   そこで、介護給付を受けるサービスや介護予防サービスは受けられないが、日常生活を営むため支援を必要とする高齢者や、支援を必要とする状態になるのを予防しようとする高齢者は、地方自治体が行う地域支援事業を利用したり、あるいは行政と関係なく、ふれあい・助け合いの活動を展開するボランティア・NPO団体などの事業を利用することとなる。
  自治体の行う地域支援事業のうちの包括的支援事業は、介護予防ケアマネジメント事業総合相談支援事業権利擁護事業包括的・継続的ケアマネジメント支援事業の4種からなる。国からの交付金を得て地方自治体が地域包括支援センターを主体に実施することが予定されている。
  地域支援事業のうち、任意事業は、国からの交付金を得て、地方自治体が任意に実施するもので、その範囲は広く、@地域の高齢者が自立した日常生活を営むのを支援するか、A介護保険事業の運営に役立つかであればよい。たとえば、介護事業者や介護している家族を支援する事業も含まれる。
  法令上の介護予防事業ではないが、実質的に介護予防に役立つような事業は、すべてこの任意事業として行うことができる。たとえば高齢者大学や敬老お祝い、高齢男性料理教室や高齢者用市内巡回バス運行、ふれあい一声運動、徘徊認知症患者保護事業、高齢者の居場所事業などであって、これらは現に自治体によって実施されている例である。
  この任意事業について、厚生労働省が定めた「地域支援事業実施要綱」別記3(3)は、「地域の実情に応じ、創意工夫を生かした多様な事業形態が可能である」と述べている。
 その地域の実情に応じたニーズをもっとも敏感にキャッチし、創意工夫して様々な支援活動を展開するのが、私たちふれあい・助け合いのボランティア団体やNPOである。
   地域支援事業の中に任意事業を設け、その実施のために、国が交付金を地方自治体に交付する趣旨は、それぞれの地域の実情に応じて高齢者の尊厳を支え、自立を支援する適切な活動が幅広く展開されるよう、各自治体の選択に委ねるということである。まだ自立度の高い高齢者の自立度を維持、向上させる活動は、介護と違って、多様だからである。
  適切に選択するためには、各自治体は、その地域の現実のニーズに応じて行われている活動を重視し、これを地域支援事業として採択するのが、もっとも法の趣旨及び交付金の趣旨に合する。特に、ボランティア・NPO団体は、満たされないニーズを見るに見かね、損得抜きで汗をかいているのであるから、その活動を地域支援事業としてバックアップするのが、住民、市民のニーズに適切に応えることになるであろう。
  ただし、任意事業は、多様であるから、地域支援事業の中でも特に、住民、市民が自発的に参加し、それぞれのやり方でこれを行うことが必要である。したがって、自治体が事業を委託する場合、事業の実施方法については、ボランティア・NPO団体の判断に委ねることが肝要である。社協・農協・生協などに委託する場合も、同じである。また、委託金の原資は、交付金に限らず、自治体独自の財源であっても、もちろん、構わない。特に高齢化が進んでいる自治体は、工夫が必要である。
  さらにいえば、高齢者の自立度維持のための活動は、たとえば居場所やいきがい活動などのように、児童や障害者などとともに行う方が、それぞれにとって効果が大きいものが少なくない。自治体は、担当課や交付金の種別を越えて、総合的なプロジェクトとして事業を創設することが望まれる。
  ふれあい・助け合いのボランティア・NPO団体は、自らの責任で活動を行うことは当然のこととして、それがさらなる広がりを得るために、右に述べたような視点から自治体の事業計画を検討し、適切と思えば自らの事業を任意事業として採用するよう働きかけるのが有効であろう。その際、自らの活動(インフォーマル活動)と、医療、福祉のフォーマルサービスとの連携状況やそれによる自立支援の効果を説明すると、説得力は倍加するであろう。
(『さぁ、言おう』2007年9月号)
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