更新日:2007年8月9日
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意見を述べない日本の青年
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日本の会社経営を委ねられたアメリカ人が驚いていた。「日本の役員や職員は、どうしてみんな意見が同じなのだろう。アメリカでは、到底考えられない」と。
私も、法務省、検察庁で組織管理をやってきたが、同感である。実に意見をまとめやすく、手応えがない。「この重大な問題について、こんなに早くまとまっていいのか」と不安になることが多い。「しっかり考えてくれているのか。責任を取る気はあるのか」と腹が立つくらいである。私が聞いた限り、ほとんどの会社の役員会も、似たようなものらしい。
日本が護送船団方式で高度成長に向け一致団結して進んだ時代は、それで良かった。
しかし、日本は進歩して、レベルが上がった。多様な価値の実現を求める個性の時代に入っている。
ところが、教育の理念も、生き方や人間関係についての“世間の眼”も、古い時代のままである。それどころか、教育などは、50年前に戻そうとされている。
青年の船のインストラクターをされた早稲田大学の野村彰男教授が嘆いておられたが、アフリカや中近東の国を含め、世界の14の国から青年が参加した青年の船で、各国のインストラクター共通の問題は、「なぜ日本の青年だけが意見を述べないか」であった。野村教授が発見した答えは、「言葉や性格が原因ではなく、日本の青年たちが貧困や環境など時代の大問題について、述べるほどの意見を持っていない」ことであった。議論でいくつもの提案が出ると、終了後日本の青年たちが、「正解はどれですか」と聞きに来たそうな。
私も、20年以上前から、似た経験を何回もしている。
これでは、これからの時代、日本は危うい。
自ら考え、主体的に生きる人間を育成しなければならない。それに直接的な効果を持つのが、総合学習である。ところが、政府は、しつこくこれを削ろうとしている。
そこで、私たち教育再生民間会議は、去る6月22日、「総合的な学習の時間の充実を求める『教育再生民間会議』提言」を発表した。教育再生民間会議ホームページ(http://www.sawayakazaidan.or.jp/kyouikusaisei)にアップし、ご賛同いただける方を募っている。
そこで掲げた、新しい時代の人間像は、別掲のとおりである。
現在の日本は、こういう大人を緊急に求めているのである。
そうでない大人は、自ら変身するほかない。わが財団が展開する人間力再生プロジェクトは、そういう変身を支援するものである。
みんなの力で、総合学習を守るとともに、人間力再生プロジェクトをぜひ成功させたい。
1 |
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生きることが楽しく、活気にあふれ、難しい課題に出合ってもこれに前向きに取り組む、自助の意欲と行動力にあふれた人 |
2 |
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自分で目標を立てることができる人 |
3 |
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目の前の状況を自分の眼で正しく認識し、前進するために何が問題かを把握できる人 |
4 |
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人を大切にし、その気持ちを理解し、人と協調し、助け合う共助の意欲にあふれた人 |
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(『さぁ、言おう』2007年8月号)
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