更新日:2007年12月7日
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輝く瞳
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東京新聞・中日新聞の夕刊に「この道」というタイトルで、私とさわやか福祉財団の活動の歴史を書き始めた。毎日の連載で、80回ほどの予定である。明年春には本にするそうである。
書き始めて困っているのは、職員やインストラクターなどと交わした会話の記録や記憶がないことである。財団の事業の成功は、職員やインストラクターその他の関係者の智恵とエネルギーのたまものであるのに、その経過を書くことができない。いきおい、私一人で成し遂げたような印象を与える記述になってしまう。私は部下の仕事を自分がやったように報告する上司が嫌いだから、毎回の原稿を、冷や汗をかきながら書いている。
それはそれとして、財団の活動の歴史を当時の資料から振り返る作業をしていると、多くの人々の笑顔や必死の形相など、その時々の熱い思いがなつかしくよみがえってくる。
考えてみれば、不思議な集団である。職員もインストラクターもさまざまな支援者たちも、偶然の出会いでつながりが始まっている。系統的、組織的に形成された集団ではない。
人々を結び付ける要素は、それぞれの人が持つ思いである。お金でもポストでも見返りでもない。さわやか福祉財団は、まさにボランティア団体であり、NPO(営利を目的としない組織)なのである。
環境の変化などで思いを追うことが難しくなり、離れていった人々もいるが、心のつながりは消えない。心を燃やして挑戦していた頃の軌跡は、共に挑戦した人々の胸にくっきりと刻み込まれているからである。
人の思いは、形になる。これが、財団の活動を振り返っての、私の確信である。
この10月、私は“永遠の友情”を誓った中国の徐愛光さんを訪ねた。かつて全人代浙江省委員であった彼女は、日本の小田原で見た高齢者施設「長寿園」に触発され、杭州市に、3000人収容の一大施設を建設中である。敷地17万平米は入手ずみ、900人分の建物は完成した。
「70歳を過ぎたあなたがそれだけのことをするエネルギーの源は?」との問いに、彼女は、「夢です」と日本語で答えた。
言葉は若々しく、瞳はきらきらしている。
日本におけるわが“永遠の友”インストラクターたちと同じ、本物の瞳の輝きであった。
夢は、人を美しくする。
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(『さぁ、言おう』2007年12月号)
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