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定期連載 挑戦−幸福づくり
更新日:2009年1月9日

介護現場の混乱と私たちの進む方向

  介護の現場は、混乱している。重い介護度の利用者が、特に都市部で、なかなか特養に入所できない。要介護度1、2のレベルでは、多くの地域で認定が厳しくなるなど、必要なサービスが受けられない。要支援や特定高齢者なども、自立を支えるサービスが欠け、全体に家族の負担が重くなってその生活を破壊しつつある。
  これらはすべて、介護保険の財源を節減することから生じている逆行現象であり、混乱はそこから発生している。
  これに対し、私たちはどのように対応すればよいか。
  介護の社会化を進めることである。高齢化は家族介護の可能性の限度をますます越えて進むのであるから、家族介護への逆行はありえない。したがって、基本的には、社会化を進めるのに必要な財源を確保することが必要である。それと同時に、適正に社会化を進めなければならない。適正とは、介護される人もする人も幸せになれ、かつ、ムダな費用負担のないことである。
  適正な社会化を考えるため、まず、介護の社会化が、介護保険によってのみ成しうるのかを問うてみよう。
  答えは、否である。要介護者は、介護を受けるだけで生きていけるわけではないからである。
  人が老いて、身体面及び精神面で次第に能力が衰えてくると、まず、医療と身体面の介護という、身体の機能を直接支えるプロのサービスが必要となる。これは家族やボランティアなどには適さないサービスで、医療制度や介護保険制度によって支えるほかない。また、身体機能の衰えにより、自分の生活を支える活動ができなくなってくる。これを補うサービスは、生活(家事等)援助のプロもできるが、家族やボランティアも可能である。さらに、精神面の機能については、精神の疾病については専門医の対応しかありえないものの、精神面の充足をもたらす行為は、家族や知人、ボランティアなど、精神的交流の意欲を有するアマチュアがその適性を有する。その面では、アマ(無資格者)がプロなのである。
  このような原則に立ち返って適正な社会化を実現するための方策を考えると、まず、身体機能の衰えを支援するのは、プロである医療と介護(介護保険制度)の専属的役割である。一方、精神機能の衰えへの対応は、機能の修復については医療の役割であり、機能の補充は、ヘルパーだけでなく、家族や知人、ボランティアらが大きな役割を果たすことのできる作業であるといえよう。
  問題は、生活支援である。特に在宅の利用者に対するそれは、介護保険制度によって基本的部分を提供する仕組みにするのも可能であるし、その枠外で、地方自治体による地域支援の仕組みを、その地域の実情に応じて構築することも可能である。また、共助の意識が進んでいる地域では、共助に委ねることもありうるし、逆に、自助の意識の強い都市部では、営利事業のサービスを市民が自由に選び、これを行政が財政面で補助する仕組み(たとえばバウチャー制度)をつくることも可能である。それらのサービスを混合する仕組みもあってよい。
  私は、在宅の生活支援についてどの仕組みを採るかは、地方の選択に委ねるのがよいと考えている。どんな仕組みが適正かは、地方の実情(住民の意識とサービスの整備の実態など)に応じて異なるからである。つまり、国において、介護保険はここまでで、あとはこういう仕組みにするというように一律に決めるのは適切でないと思うのである。国としてすべきは、広く福祉に必要な財源をしっかり確保することと、地方に大幅な裁量権を与え、黙って必要な資金を提供することである。そして、地方が、住民主体の福祉の仕組み、つまり、尊厳を支える福祉の枠を外れた時は、チェックしなければならない。また、何れかのサービスが足りないため介護の社会化に欠落部分が生じている時は、これを補うための支援をする必要がある。それ以上の介入は要らない。それが、生活支援について適正に社会化を進める方策だと考える。
  さわやか福祉財団のふれあい推進事業も、基本的に以上に述べた考え方に立って進めている。ブロックの実情に応じ、活動の進め方を次第に委ねていく方向で事業を展開しているのも、地方に応じて介護の社会化の実情も異なり、それと両輪の関係にある私たちのふれあい事業(生活支援や精神面を充足する活動)のあり方も異なるからである。
  その前提でふれあい事業をさらに強力に展開していくために、さわやか福祉財団とブロック及びインストラクターは、
しつかり目的(新しいふれあい社会の構築)を共有しながら、きめ細かく情報を交換して、同じ認識を持ち、協働して、
それぞれの地域に最適の方法でふれあい事業を展開していきたい。
  それがよりきめ細かいものになるのに比例して、人々はより幸せになり、日本の社会はより暮らしやすい、良い社会になっていくであろう。

(『さぁ、言おう』2009年1月号)

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2008年10月8日 有効な政策提言
2008年9月10日 多様な能力を生かせる就業
2008年8月8日 東京砂漠の壁
2008年7月9日 これ以上社会保障費を抑えるな
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