更新日:2014年2月11日
|
新地域支援事業とインストラクター
|
|
要支援者に対する生活支援を市町村に委ねる制度改正は、さわやか福祉財団の事業にとっては、介護保険制度が出来た時以上に大きな影響が出る。「私たちが推進してきたふれあい・支え合いのボランティア活動が、どこまで困っている人々を支えることができるか」が、全国的に試されることになる。
その一方、この制度改正は、まだふれあい・支え合いのボランティア活動が行われていない地域に、これを広げる絶好のチャンスになる。行政側も、財政的理由(より安い費用でサービスを提供できる)もあって、ボランティアやNPOなどによる生活支援に期待しており、これを広げるために、生活支援コーディネーターを市町村が養成、雇用することを考えている。このコーディネーターが、わが財団のインストラクターのような役割を果たしてくれれば、その地域にはふれあい・支え合いのボランティア活動が広がるだろう。 しかし、わがインストラクターのような、本物のコーディネーターを養成するのは、容易にできることではない。彼らは、それぞれの担当地域において、「お金を目的とするのではなく、地域を愛し、地域の人々のために、無償で、あるいは報酬に至らない謝礼金(ポイントなど)を得るだけで、継続して一肌も二肌も脱ぐ人々」を、掘り起こしていかなければならない。それも、かなりの数が必要なのである。
* * *
生活支援コーディネーターの主な役割は、
@地域の実情把握
行政と協力して、地域で生活に困っている人々が、どんなサービスを求めているか の実情、及び地縁団体やNPO、地域社会福祉協議会などがどんなサービスを提供しているかの実情をつかむ
A足りないサービスの創出
地縁団体をつくったり、既存の地縁団体に働きかけると共に、NPOなどの起ち上 げをリードし、社協などの団体に働きかけるなどして、足りないサービスをつくり出す
Bネットワークの形成
生活支援サービスをする各種団体が、ネットワークを組み、必要なサービスを包括的に提供できる体制をつくる
C行政との協働
医療や介護、介護予防などのサービスを提供する組織や地域包括支援センターなどと常時個別サービスに関する情報を交換し、ケアと生活支援サービスが一体的に提供される体制をつくる
また、市町村の担当部局と連携し、制度やその運用の改善を提言する
Dコーディネーターの支援組織の運営
生活支援のコーディネーターを援助してくれる人々、たとえば地縁団体をまとめてくれる人、関係NPO連携のキーパーソン、地区社協のネットワーカー、ケアマネジャーの統括者、志ある社会福祉士、配食、移送などの団体をまとめている人などが連携するゆるやかな支援組織をつくり、これを運営する
などがある。
インストラクターは、自らが生活支援コーディネーターになるのが無理な場合でも、自分が仕掛けている市町村において、しっかり生活支援コーディネーターを補佐し、上記@ないしD、特にA(足りないサービスの創出)とB(ネットワークの形成)の役割について、これまでに培ってきた能力を発揮してほしい。
Aの足りないサービスの提供の方法(やり方)としては、地域の実情に応じてニュアンスの差はあるものの、居場所、地域協議会、時間通貨・地域通貨(時間預託やポイント制を含む)、いわゆる有償ボランティア(実費負担から謝礼金まで)などがあり、サービスの内容によっては、コミュニティービジネスが適するものもある。介護保険施行前の体験が生きる場面も多いであろう。
なお、ここまで「サービス」という定義を使っているので、サービスする側とされる側が分かれた方法(やり方)を思い浮かべるかもしれないが、それが間違いであることはご承知のとおりである。サービスは、お互い様の精神でしてはじめて、ボランティアのあたたかさが生かされ、継続して行われるものになるのであって、これを忘れては、報酬を目的とするサービスと同じものになってしまう。
* * *
さわやか福祉財団は、この春、全国インストラクターの賛同を得て、各地で、フォーラムと検討会を開くことを企画している。フォーラムは、市町村(特に地域包括支援センター)や生活支援サービス提供者などを対象に、市町村が新しく担う生活支援の仕組みなどを理解し、考えるために開く。これに引き続いて、市町村ごとに、その実情に応じた仕組みを考えるための関係者による検討会を持つことを企画している。
厚生労働省は今年の7月には仕組みのあらましを固める意向である。これに遅れないよう、これまでの経験知をフルに生かした良いモデルを開発したいと願っている。 |
(『さぁ、言おう』2014年2月号)
|
|