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提言 福祉・NPO・ボランティア
更新日:2006年6月6日
団塊シニアとNPO  社会はあなたの力を待っている
  自ら拓くしかない
  団塊の世代は受難の世代である。子どもの頃から退職まで、常に競争に駆り立てられていた。だから、頑張り屋である。
  しかし、頑張っても、報いは乏しかった。先輩たちも長寿となり、ポストが空かなくなって、出世が遅れた。やっと出世する頃には、バブルがはじけてリストラが始まった。親の面倒はみているが、自分の子は面倒みてくれそうにない。
  かわいそうな頑張り屋さんたちに、せめて老後は幸せに過ごしてほしいと願う。
  ところが、その頑張り屋さんたちが、NPOの世界に入ってくる気配が見えない。このぎらぎらと華やかに見えて騒がしい、要するに、金は儲からないが生きがいに満ちた、楽しい世界に気づいていないらしいのである。
  この間、同じ問題意識を持っておられる団塊の世代のフリーライター加藤仁さんと、「どうしたんでしょうね」と首をかしげながら分析した結果は、「彼らは指示を得て動く人たちだから、自分からは動こうとしないのじゃない?」ということであった。
  それは困る。社会はあなた方、団塊の世代シニアの馬力に期待している。若い頃は理想を求めて社会の不合理に闘いを挑んだではないですか。
  もう一度、思い起こしてほしい。自ら拓かないと、自分も家族も不幸になるのです。

  一度自分をみつめてみる
  定年後の一番楽なルートは、会社から子会社に送り込んでもらうことであろう。そのルートに乗れるなら、それでよい。しかし、いずれ2年もすれば、そこでも退職の時が来る。
  やっぱり、退職後のことは今から考え、腹を決めておいた方がよい。ひとつの選択肢であるが、ベンチャーに挑む気力があるなら、それはおおいに結構である。本誌の編集者には悪いが、道はNPOしかないというわけではない。
  要は、自分のやりたいことをやることが一番である。
  今まで、やりたいことがあまりやれてないのではなかろうか。若い頃、あんなに燃えていたのに―。
  世の中とはこんなものだとの諦めに達して、組織の言いなりになっているうち、自分のしたいことが何なのか、忘れてしまったのかもしれない。
  これからは、やりたいことがやれる。時間はまだまだある。あなたの行動を制約する上司も組織も、ない。あなたは、無限に自由である。養うべき子どもは巣立ち、義務はない。あなたの家族は、あなたが生き生きと羽ばたくことを期待している。あなたの健康と生きがいは、社会全体の要望でもある。
  なのに、あなたは、やりたいことが見つからない。なぜわかるかって? やりたいことが見つかった人は、私の小文なんか読まないからである。
  見つからなくても、まだあせらなくていい。自分に合ったことを見つけないと、結局うまくいかないから、ここは落ち着きどころである。京セラの稲盛和夫さんは、「1、2年、お寺で修行したら」と言っておられるが、そこまでしなくていいから、これだというのを見つけてほしい。思春期の頃あこがれていたことに挑戦するのも、スリリングであろう。どうせ20〜30年で死ぬのだし、失敗したって大した迷惑はかけないのだから、何だってやってみるのがよいと思う。
 
  やることは沢山ある
  肩書を全部はずして、ゼロから挑戦するというのは、不安も大きいが、わくわく感も大きい。いくつになっても、夢を追うことは、熱い思いとエネルギーが涌き上がってくるものである。恋愛と同じだといえよう。
  やることは、たくさんある。
  あるのだが、わからない人は、奥さんの活動を手伝う手もある。奥さんの方は、仲間と地域でしたいことをしておられるから、先導役として最適である。
  妻に従うなんて、と反発する人は、やりたいと思う活動をやっているNPOを探すのがよいと思う。インターネットでも、行政の広報誌でも、本屋のボランティアコーナーにある書物でも、情報はたっぷり得ることができる。驚くほどいろんな団体がいろんな活動をしている。
  行ってみて、その団体の雰囲気が気に食わない時は、自分でNPOを起ち上げるのもよい。インターネットで「この指止まれ!」と呼びかければ、きっとあなたと同じような物好きが何人か寄って来るだろう。その中の気性の合いそうなのと組むと、ことはとんとんと動き出すに違いない。
  社会のニーズから言えば、学校についていけない子どもたちを支えるか、高齢者の面倒をみるかの2つが大きい。
  今の子どもたちは、自分に自信が持てなくて、本当にかわいそうだ。大人本位の要求ばかりで、子どもの自ら育つ力がほとんど殺されてしまっている。自分が嫌いか、ただわがままなだけか、そんな子どもばかりが増えて、自分の孫の世代はどうなるのだろうと心配になる。同感の人は、ぜひ一肌脱いでほしい。子どもたちの通学路を見守ることから始めてもよい。
  それに、高齢者の認知症。その財産と生活を、本人の立場で管理する成年後見人が日本でやっと5万人である。ドイツでは百万人いるというのに。他人事ではないと思ってほしい。やっと市民後見人の養成が始まり出したから、ボランティアで応じてみるのも、自分のいきがいづくりになると思う。
  繰り返すが、やるべきことは沢山ある。社会は、あなたの力を待っているのです。

特定非営利活動法人 関西国際交流団体協議会発行
「NPOジャーナル」Vol.13/April,2006掲載
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