更新日:2006年6月28日 |
歳入庁への道程 |
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2年前の社会保険庁の不祥事で、抜本的な組織改革をすることとなり、村瀬さんが、乞われて民間から同庁長官に就任した。私も、助っ人を頼まれ、最高顧問となった。私のアドバイスの第一は、職員の気持ちの把握と、志気の鼓舞であった。
村瀬長官は、精力的に社会保険事務局や事務所を回り、職員との対話を重ねた。そして、職務効率の妨げとなる労働組合との協定をすべて破棄し、市民からの相談を受ける時間を拡大するなど、国民本位に執務する環境を整えた。
一方、組織改革の方向についても幅広く検討が行われ、昨年春に骨格が固まった。現在の組織を3つに分け、年金業務を特化してねんきん事業機構をつくる案である。
残念なのは、これらの改革作業の報道が、不祥事の報道よりもはるかに少なかったことである。
改革を実現するための法案の審議中に、思いもかけず、今回の不正免除事件が発生した。
反省点はあるが、ここでは、これからどうするのかについて、問題提起しておきたい。
朝日新聞や民主党などから提言されているのは、国税庁などと統合して歳入庁をつくる案である。私も、最高顧問就任前から、各種負担金の徴収を統括する歳入庁がもっとも効率的で、負担の公平を実現できると考えており、顧問就任時にも、その考えを述べている。
ただ、国税庁と合体することには、財務省も厚生労働省も消極的で、それを実現するには官邸と政治が一体となった強力な指導が必要であり、実現には時間がかかる。そのうえ、合体すれば効率性と公平性が実現するかというと、そうではなく、国税庁も九・六・四(クロヨン)とか十・五・三(トーゴーサン)とか言われるように、公平性の点で問題を抱えている。それを解決するための納税者番号制度の導入がぜひ必要だが、これにも相当時間がかかりそうで、間に合わない。
だから、歳入庁を実現する観点に立っても、年金事務に特化した組織をつくり、できれば社会保険番号制も導入することが、当面の対策となるとともに、将来の合体への一里塚となると考えるのが現実的であろう。現状のまま放置というのが最悪である。 |
(時事通信社「厚生福祉」掲載/2006年6月23日) |
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