更新日:2007年2月9日 |
広い視点から労働改革を |
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今年は、労働が改革のテーマになる年である。
改革に当たっては、「障害者や高齢者を含め、すべての人の労働意欲を生かす仕組みにする」という視点をしっかり持ってほしいと思う。
就労意欲を持つ人に働く場を与えず、彼らを社会保障の対象に追い込むことは、その分の公的負担の増大を招き、企業の経営や労働者の生活にマイナスをもたらす。目先のコスト削減だけを追い求めていたのでは、企業体質の改善が遅れ、労働力の全体的劣化を招くことになるであろう。
若い障害者が「障害年金で8万円貰(もら)うよりも、働いて1万円貰う方がよほどうれしい」と言う。
また、午前中2時間、駅前の駐輪整理のアルバイトをする高齢者は「運動になるし人は喜ぶしで気持ちがいい。おまけに貰ったお金で一杯ビールを飲んで、元気もりもりだよ」と言う。
働くことが、身体の自立と尊厳の保持という福祉の目的を実現するのに、有効なのである。
そのことは多くの人々によって体感されていることなのに、障害者の雇用は依然として進まないし、定年制も廃止されない。
それは、経営者が労働生産性を重んじるためであるが、私は、労働生産性を高めるのは働き盛りの社員のフルタイム稼働に限るという考えは独断だと考えている。
日本の雇用は、その労働力をどう生かすかという需要の分析がなされず、だから、どういう資質をどの程度持った人をどれだけ雇うというような具体的基準がなく、人間性などという、その企業に必要な労働力とはあまり関係のない抽象的な判断で、採用が決まる例が多いように見受ける。そして、転職が不利な社会の仕組みになっているから、一旦(いったん)発生したミスマッチは容易には修正されない。これは企業にとっても働く人にとっても社会にとっても、損失である。
自社が必要とする労働力の質を詳細に分析し、就労希望者の労働力の質を把握すれば、障害者であろうと高齢者であろうとニートであろうと、その労働力を生かす職務と適切な働かせ方が見つかる筈(はず)である。多様な労働力が適切に評価され、本人にも企業にもプラスになるように生かされる方向で労働改革を進めてほしい。 |
(時事通信社「厚生福祉」2007年1月30日掲載) |
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