更新日:2011年10月6日 |
復興支援のバスツアー |
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寝がけに露天風呂に行った。
「堀田さん」と先客が私を呼ぶ。バスツアーに参加してくれた宮城県山元町の被災者である。
「いちばん感謝しているのは、自衛隊の皆さんですよ」自衛隊に命を救われ、そして被災した人々がどれほど生活を支えてもらったか、彼はとつとつと語った。
「警察にも、消防にも助けられました。それからボランティアの人たちにも。ボランティアなんて考えたこともなかったけど、自分たちは寝袋で寝ながら、あんなに一生懸命ひとのために働くなんて、信じられないことです」
しばらく黙ってから、彼はポツリと言った。「私もひとの役に立ちたいと思ってるんですけど」
被災者の方々は、あくまで謙虚で前向きであった。
次のバスツアーは、北茨城の津波被害者たちをお誘いした。
「どこに行きたいですか」という問いに、返って来た答えは「福島の避難者たちを励ましに行きたい。私たちより辛いだろうから」
福島県からの避難者たちを訪ねた先では、涙、涙。
眼と眼が合った途端に心が通じ合い、見知らぬ同士が抱き合って肩を震わせる。言葉は要らない。
そして、次の会話は「何に困ってる?」
早々とメルアドを交換して、送る品物を決めている。被災者同士で。
こんなに前を向いている人たちだから温泉につかって積もりに積もった疲れをほぐすと、津波に流された町をどう復興するかに話は及ぶ。
「少しでも早く復興するには、流されたJRの駅を元の場所につくってもらうのがいいだろ?」
「それじゃまた津波が来るかも知れんじゃないか。高台に線路を移すべきだろ?」
議論は白熱し、つかみ合いにならんばかりである。
しかし、ここは住民の間で徹底的に議論してもらった方がいい。行政が決めた後では、反対者が出るとおさまりがつかなくなる。
だから、復興を語り合うためのバスツアーを続けることにしている。 |
(京都新聞「暖流」2011年9月11日掲載) |
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