更新日:2013年11月30日 |
共助の力 |
|
「台湾の介護や医療を知れば知るほど、私たち日本に居てめぐまれてることを痛感しますわ」
台湾の医療・福祉の視察旅行に参加された奥様が、しみじみとおっしゃった。
日本では医療保険も介護保険も当たり前なのだから、世界でも最高レベルである。
それはそれとして、私には台湾をうらやましく感じたことがある。
寄付文化がしっかり根付いているのである。貧しい人々に対する医療を提供する病院は、地域の寄付に支えられて、小ざっぱりと美しい。福祉と医療があわせて提供されているから、病院の一室では、精神障がいや知的障がいを持つ先住部族の人々がデイケアを楽しんでいる。
私たちを案内してくれたガイドの女性も「私も週に1回は寄付しますし、月に1回はボランティアに行きます。施設に行くこともあるし、街の掃除の時もありますけど、行くと元気になりますね。楽しいです」とこともなげに話す。
健康保持の努力も大変なもので、中国本土でも同じだが、朝早くから公園などで太極拳を舞う人々が集まっている。台湾ではフォークダンスに興じる中高年女性の晴れ晴れとした顔が印象深かった。2時間近く踊ったあと、公園のリハビリ道具で足腰や腕を鍛えているのだから、長生きは間違いないだろう。
100歳教室を見学した。
70代から90代の男女20名ほどが、真剣に漢字の書き取りをしている。高い年代には、読み書きのできない方が結構居られるという。字を覚えて、できれば働きたいという希望だそうで、腰の曲がった老女が、机にへばりつくようにして習字に取り組む姿には、ぐっと来るものがあった。
教える先生の声のよく通ること。91歳とはとても思えない。ボランティアを続けているからお元気なのだろう。補助の女性たちも学生ボランティアで、いたわるように教えている。
社会に染み通っている共助の力があたたかかった。 |
(京都新聞「暖流」2013.11.25掲載) |
|