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提言 福祉・NPO・ボランティア
更新日:2013年7月4日
ホームレスか刑務所か
 ホームレスの人の多くは「刑務所に入るくらいならホームレスの方がいい。自由があるから」と思っている。ところが刑務所に入っている人の多くは「ホームレスになるよりは刑務所に入っている方がよい。三度の食事にありつけるから」と考えている。
 どちらがいいかという問題ではない。どちらにもならないよう努力するのは当然。それだけでなく「そうなっている人たちを何とか救い出したい」と感じる人たちが増えてきている。
 無実の罪で半年近く拘置所に収容されていた村木厚子さんは、国家賠償で得たお金を全部寄付して、刑務所から出た障がい者たちの就業などを支援する「愛の基金」をスタートさせた。何ともさわやかな志である。このたびの厚生労働省の次官ご就任は快挙である。
 これに先立ち、「刑務所には知的障がい者がごろごろいる」と言って、彼らを福祉の力で救う必要性を強調されたのは、元衆議院議員の山本譲司さん。秘書の給与の詐欺を潔く認めて服役中、刑務所にいる障がい者の世話役をされた。村木さん同様、人として実に魅力的な方である。
 山本さんのアピールを受け止めた福祉事業者の田島良昭さんや、元矯正局総務課長の林眞琴さんらの陰の力があって、2009年、国は刑務所等からの出所者を支援する「地域生活定着支援事業」をスタートさせた。京都府では、社会福祉法人の南山城学園がこの事業を引き受け、全国的に見ても光る成果を挙げている。
 同じ年にNPO全国就労支援事業者機構(会長奥田碩氏)が発足、出所者等の就労に協力する事業者は3年で8900を超え、雇った人数も1600を超えた。
 ホームレスなどについても、生活困窮者自立支援法案は会期末のドサクサで廃案にされたものの、国としては、NPOなどと協力して職場を斡旋するなどの支援をすることにしている。
 身勝手な人も多い世の中だが、それでも困っている人を救おうとする動きは着実に広がっている。
(京都新聞「暖流」2013.6.30掲載)
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