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提言 教育
更新日:2007年11月16日
私の宝物
  NHKの「課外授業ようこそ先輩」という番組を見たことがありますか。今年の8月4日土曜日朝放映されたその番組は、私が中京区の洛中小学校で行った授業風景を撮ったものでした。私は法律家ですから、6年生の生徒たち34人みんなで、いじめをなくすための憲法をつくるのをリードしました。
  私の後輩たちはみんな元気で、どんどん意見を言い、いじめをなくすための知恵は6つの条文にまとまりました。その第1条は、「一人一人の悪いところでなく良いところを見て仲良くしましょう」というものです。
  番組を見た多くの人たちがこぞって、「あの生徒たちって、みんなすごくしっかりしてますね」とほめてくれました。
  テレビでは時間の関係で放映されませんでしたが、私は宿題として「クラスの人全員の良いところを書いてきてください」と言って、シールを渡しました。そして、翌日、それぞれに渡してもらいました。もらった方は、「そう思っていてくれたなんてうれしい」などと言いながら、もらったシールを台紙にきれいに張りつけました。私もみんなとシールを交換しました。
  もらった34枚のシールを張った台紙は、私の宝物として、私の事務机の横に飾ってあります。夜遅く仕事に疲れてやる気がなくなりそうな時や、匿名の人の悪意に満ちた非難のメールに心傷ついた時などには、宝物を見ます。「みんなに区別なくやさしい」「すごく明るくて元気」「日本のことを考えてボランティアしている」などという言葉が並んでいます。書いた子のきらきらした目を思い出すと、「あの子は、ぼくのこういうところを認めてくれたんだ。それじゃ、そうなるように頑張らなくちゃ。ここでへばってられないよ」とやる気が戻ってくるのです。
  福祉に限らずどの世界でも、人と人との関係は、まず相手の良いところを認めることから始まると私は信じています。
(京都新聞コラム「暖流」2007年11月11日掲載)
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