更新日:2008年7月26日 |
「半減の長期目標合意で十分か」
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CO2削減は、難しい。世界の首脳が顔をそろえる豪華さと、警備の労力の大きさとを実感しながら、国際的な課題に対応することの困難さを、改めて思う。
しかし、温暖化の防止も、食糧やエネルギーの調達も、人類の存続に係わる問題である。何としても解決への道すじが見える状況にしなければならない。
それには、先進国、発展途上国のいずれもが納得するような理念と目標が必要である。サミットを含め、これまでの国際協議で欠けていたのは、それではなかろうか。
2050年までに温室効果ガスの排出量を半減するというG8が採択した目標だけでは、すべての国をまとめる理念を欠き、心に響く力が弱いと感じる。
私は、「2050年には、すべての国の国民の平均的豊かさ(国民1人当たりのGNP)を同等にし、1人当たり温室効果ガス排出量も同等とする。そして全体量を半減する」という目標がよいと思う。その理念は「世界のすべての人々の平等」である。この理念は、食糧やエネルギーの消費についてもそのまま用いることができる。
この目標達成のために、世界の国々が努力しなければならない条件は、大きく3つあると思う。
1つは、発展途上国の経済レベルを、50年には先進諸国とほぼ同等にすることである。敗戦で廃墟と化した日本が、ほぼ30年間で先進国の域に達したこと、先進諸国の経済力がアフリカ等に進出し、かなりのスピードで都市部の開発が進んでいる状況などを考えれば、あと40年で、発展途上国の経済発展を先進国並みにすることは十分可能であろう。ただし、諸国の協力が必要である。
2つは、発展途上国の人口減少である。今のように人口が爆発的に増えていたのでは、国民1人当たりの豊かさが上がらないだけでなく、消費量の増大があらゆる環境破壊の基本的な原因となる。経済力が上がり、死亡率が減れば、その国では自然に産児制限が進むが、その速度を早めたい。中国のような1人っ子政策は難しいとしても、発展途上国は、国民に安心を与え、出生率を下げる努力を続けなければならない。また、先進諸国もあらゆる支援を惜しんではならない。
私は、人類が地球の環境と調和を保ちながら心身ともに豊かに生存し続けるには、20億から30億(前世紀半ばころの総人口)くらいの人口にするのが適切だと考えている。そうなれば、大きな負担なく環境問題を解決する基盤が整うであろう。
そのような人口にするには、図のように、総人口を、20年80億を頂点として、50年に60億(00年のレベル)とし、90年に20億ないし30億にするという目標を共有したい。目標達成後は、その人口を維持しつつ、すべての人が平等な機会のもと、他の動植物とも共存して、楽しく、平和に暮らしていけるであろう。
3つは、それまでの間も、諸国が、温室効果ガス削減のために可能なすべての努力を傾注することである。発展途上国の経済発展は大歓迎であるが、それと矛盾しない技術的手段が採用され、進化しなければならない。共通の理念を全員の協力で実現したい。 |
(電気新聞「ウェーブ」2008年7月16日掲載) |
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