政治・経済・社会
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提言 政治・経済・社会
更新日:2009年7月1日

政策の具体化

 医療や介護の仕組みで評判が悪いのは、後期高齢者医療制度と、2005年の介護保険制度の見直しである。私はそのどちらにもかかわっている。
 後期高齢者医療制度は、現役のサラリーマンの不当な負担増を防ぐことを主目的に制度設計されたが、私は、その医療のあり方を議論する特別部会に参加した。身体の機能がゆるやかに衰えていく高齢者に対する医療は、病を癒やせばたちまち機能がフル活動する若者や中年に対する医療とは、異なる面がある。そこを明らかにして、病の克服が絶対ではなく暮らしの平穏が大切なこと、そのため医療と福祉などとの連携が特に必要なこと、また、終末期を含め本人の生き方の選択が重要なことなどを指摘し、高齢者にふさわしい医療の仕組みにするという意見がまとまった。具体的な報酬の設定は、行政当局が行った。ふたを開けてみれば、世論(マスコミ)の総スカンである。
 05年の介護保険制度の見直しは、10年先を見通した幅広いもので、今でもその報告書『2015年の高齢者介護〜高齢者の尊厳を支えるケアの確立に向けて』は、私が研究会の座長を務めたから言うわけではないが、世界に誇れるほどのものだと思っている。現に韓国は、これも大いに学び、その介護保険制度を構築したと聞く。しかし、この時の見直しも、現場でははなはだ評判が悪い。サービスが絞り込まれたからである。研究会では考えもしなかった事柄についての経費節減措置が改革に便乗して講じられたのである。
 有識者が討議して打ち出した政策を具体化するのは厚労労働省であり、それに必要な経費をどうするかは財務省との折衝になる。私は、財務省が厳しく経費節減を求めることはきわめて重要な責務だと認識している。各省庁は自分たちの権限拡大を求め、政治家は選挙民の票と後援者の支持を求めて予算獲得に奔走する。国民の懐のために支出を抑えようと頑張ってくれるのは、財務省しかない状況である。しかし、支出を抑えると国民に対するサービスが減る。それが国民にとって納得できる選択かどうかは、ふたを開けてみなければ分からない。その選択に国民が参加できるよう、折衝過程における議論の要点を公開することが必要ではなかろうか。

(時事通信社「厚生福祉」2009年5月29日掲載)

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