更新日:2012年10月4日
日本の経済発展
一国の経済が飛躍的に伸びるケースは、いくつかある。石油やガスなどの発掘。ただ、日本は残念ながら資源に恵まれていない。世界が求める発明。18、19世紀は発明の恩恵が世界に及ぶスピードが遅かったから、新発明品の生産、輸出による経済的利益は大きく、相当期間続いた。しかし、文明のレベルがかなり均等になった今はたちまち類似品が出現するから、発明は強いバネにはならなくなった。安い人件費。日本の発展途上時代は、これが輸出拡大の大きな要因であったが、今の日本では、このバネはまったく効かず、逆に発展途上国に押される要因になっている。最後に、戦争。戦後の日本は朝鮮戦争の特需で息をついたが、こういうことはあってはならない。
このように見てくると、日本の経済が、昭和30年代から50年代までのような高度成長を遂げることは、もはやない、と言えよう。
そのありえない経済成長をあてにして「増税するのは増税の痛みをあまり感じない経済成長をする時まで」などと主張するのは、まやかしである。「今、増税すると痛みがあまりに大きいから」という議論も、心情的にはアピールするにしても、まともな議論としてはいかがであろうか。クールな言い方をすれば、痛みを伴わない増税などありえない。だから、その議論は、痛みの実情に対してどのように配慮するのかの検討をうながす議論としては成り立っても、絶対反対の議論としては成り立たないのではなかろうか。
そうは言っても、日本の経済が少しでも伸びることは望ましいし、是非伸びてほしいと願っている。
一国の経済成長の大きな要因が低い人件費にあるとすると、経済成長は人件費格差の大きい国へと次第に広がっていく。そのようにして世界の人件費格差が縮まっていくことは、世界の文明文化の進展のためにも人権格差の解消のためにもよいことである。世界各国の民主化が世界平和を強固にするという観点からも、大変好ましい。
日本の経済発展は、日本の智恵と資本と人材とを、人件費の低い国や地域に注ぎ込むことによって遂げるという長期経済戦略が必要だと思うのである。
日本の企業は、中国の沿岸部に智恵と資本といささかの人材を投入してきた。中国沿岸部の経済は急速に発展し、日本への信頼感も、投入した範囲では生まれていた。しかし、尖閣諸島の領有をめぐるナショナリズムの暴発を抑える程度には至っていない。そして中国沿岸部の経済発展はもはや日本の智恵と資本を絶対的に必要とするものではなくなっている。そのため、日中関係は危ういものになっている。
日本は、中国の内陸部の経済発展に、これまで以上に参加する努力が必要であろう。
そして、中国だけでなく、東南アジア諸国、中近東諸国、さらにはアフリカ諸国について、そこが高度経済成長を遂げるように、経済的に参加していくのが、日本経済の発展のためにも望まれることであろう。
全面的参加を政府の戦略として鳴物入りで打ち出すことは、経済的支配の疑念を招くから控えなければならないが、発展途上国と強い友好関係を結び、民間を主体としてその国の経済成長や民生度の向上を支援することは、相手国の国民の歓迎することである。そして、民間の交流から生まれる強い絆は、国政レベルで緊張が生まれた時に、強い抑止力として働くであろう。
経済は、大きな流れで見れば、世界の国民、市民を幸せにする方向で進んできていると言えよう。
日本の政治も社会も、もう少し目を世界に広げ、その幸せの向上に寄与する方向で進んで欲しいと願っている。
(電気新聞「ウエーブ」 2012年9月26日掲載)
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