更新日:2012年10月24日
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働く場がいっぱい |
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いじめでずっと不登校だった青年、自閉症の女性、ダウン症の中年男性。
横浜の磯子区を中心に飲食店などを経営する株式会社K2インターナショナルジャパンの従業員のほとんどは、就職困難な事情を抱えた方々である。その事業の一つ、アロハキッチンを訪ねた。みなと総合高校の学食を運営している。
「このおじさんはね、この大きな麺のかたまりから、片手でラーメン一杯分の麺をつかんでいくの。それが、あとで計っても重量がみごとに全部一緒なの」アロハを着たおじさんが、アッという間に何十という麺の魂をつまみ出していく。
「こちらのこの子(女性)はね、じゃがいもむきの名人よ。大きなダンボール5つに満杯のじゃがいもなんて、アッという間にむいちゃうのよ。全然休まないで」
ご飯炊き名人の引きこもり女性、キャベツ切り名人の知的障がいおじさん。
キッチンは、アロハを着た名人ぞろい。
「どうしてみなさん、そんなすごい技術を身に付けられたのですか」
「やっているうちに、自然にそれぞれの得意技がわかってきてね。あとは集中してやるうちに腕が上がってきたのよ」というのが、責任者鳴海加奈子さんの説明である。3名の専任と、1名から5名のボランティアスタッフで、食べ盛りの全校生の食事をまかなう。
パネルでご一緒した静岡県磐田市のコーケン工業株式会社社長村松久範さん(70歳)は、雇っている100名の従業員のうち7割が、65歳以上だという。機械メーカーなので力も根気も要る仕事なのだが、それぞれの高齢者に合った仕事を割り当てて、若い人たちと同じように働いてもらっているそうな。
「92歳まで働いた女性ですがね、尿がもれるのでおしめを当てて、それでも8時間働いたんだよ、どうしても仕事を辞めたくないと言って」
頭の固い社会が締め出している人々でも、実は、十二分に社会に役立つ能力を持っているのである。 |
(京都新聞「暖流」2012年10月14日掲載)
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