更新日:2013年9月28日
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住民の力を引き出そう |
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「あそこの一人暮らしのおばあちゃん、このごろ買い物に行くのも苦労してるでしょ。私らで何とかしようよ」というのが、一九八0年代から九0年代にかけて、ボランティアが助け合いに動き出した一般的な動機であった。
お世話になる方も自立しておられたから、「お礼なしでお世話になるばっかりでは嫌だし、気持ちの分だけ払わせて」ということで、有償ボランティアの形になっていった。ボランティアの中には、「お金をもらうのはどうも引っかかるから、預けておく。私が困った時には、その分で助けてもらうわ」というので、時間預託を組み合わせる仕組みが生まれた。
それらの活動は、全国でいまも続いているが、介護保険制度が生まれてからは広がらなくなった。それまでやってきた家事援助が、介護保険のサービスでかなり賄われることになったからである。
それが、社会保障制度改革国民会議の最終報告で、要支援者に対する支援が国のサービスから外され、市町村に委ねられることとなって、再び注目を浴びるようになった。
ボランティアは、市町村からすれば予算が少なくて済み、住民からすればその分負担が減る。しかし、それよりも重要なのは、地域の人々の生活の実情や気持ちに応じて、柔軟な形での支援ができること、助けてもらう方も自分でやれる限りは頑張ってやり、人を助けられることがあればそれもやって、楽しく生きていけるということ、そして、助ける方も、いきがいを得て元気になること。要するに、決められたリハビリよりもずっと介護予防の効果が上がるということである。
私たちは、介護保険制度ができたあとも、心のふれあいに重点を置いたボランティア活動を続けながら、いろいろと学んできた。居場所の果たす役割の大きさ、高齢者に限定せず、子どもや障がい者、認知症者など、誰もが参加し、自分を生かし、助け合ってこそ大きな効果が上がること、地域のさまざまなサービスがネットワークを組むことの重要性−。
市町村はとまどっている場合ではない。それら住民の力をどれだけ上手に引き出せるか。要支援者等を支える鍵は、そこにある。 |
(「厚生福祉」2013.9.27掲載)
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