政治・経済・社会
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提言 政治・経済・社会

更新日:2014年4月12日

地域の力
 このところ、福祉の仕組みは大きく変わろうとしている。介護保険制度ができた2000年ころ、「やってあげる福祉」から「選べる福祉」へと、大きな転換があったが、それにも劣らない大転換と言える。今回の転換のキーワードは「利用者にサービスする福祉」から「利用者と地域の力を生かす福祉」への転換だと言えよう。
 例えば、子ども・子育て支援である。これまで児童福祉・教育は幼稚園、保育園、学校などで保育、教育などのサービスを提供すると共に、恵まれない子を養育するというものであった。今回の改革では、子ども・子育て支援はそれだけでは足りず、幼いころから地域での交わりや近隣の方々の支援で子どもの健全な成長を助けようとする方向に舵を切ろうとしている。各市町村に子ども・子育て会議を設け、地域の方々の知恵で仕組みをつくろうとしているのである。
 生活保護分野では、その費用を節減する一方で、生活保護を受ける前の段階の生活困窮者に対し、働く意欲を引き出し、本人に合う働き先を見つけ出そうという生活困窮者自立支援制度が新たに設けられた。この制度も行政任せではうまくいかない。地域の方々が近隣の困っている人に手をさしのべ、励まし、よりそって支える必要がある。
 介護保険制度における要支援者に対する生活サービスも介護保険制度からはずされ、市町村に委ねられることになった。受け継ぐ市町村は、これまで通りのサービスを提供するだけでは合理化しない。地域の力を引き出し、近隣の助け合いで本人のやれないところを助けると共に、本人も、例えば子どもの相手をするなど、やれることはやる。その方が本人も地域の人々もいきがいが持てるし、行政の費用(つまり私たちの負担)も軽くてすむ。
 より少ない負担でよりよいサービスを実現するには、本人の力と地域の力を引き出すしかない。私たちはそういう転換の時を迎えている。

(京都新聞「暖流」2014.1.19掲載)

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2014年 3月19日 葬儀まで
2014年 1月30日 市町村の覚悟
2013年12月19日 地域の時代
2013年 9月28日 住民の力を引き出そう
2013年 8月29日 社会保障改革の「宿題」
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