政治・経済・社会
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提言 政治・経済・社会

更新日:2014年11月3日

不当税制を阻止した市民の力
 平成14年11月1日に始まった税制調査会の非営利法人課税ワーキンググループの討議では、公益法人性悪説の空気が支配的であった。発言が多い猪瀬直樹委員には、天下りの役員が役所と結託して事業を独占する公益法人の悪質性を暴き出した著作があるし、そもそも公益法人改革自体がKSDの不祥事を機にスタートしたものだから、学者委員もそういう視点から改革の方向を論じていた。私は大多数の善意ある公益法人やNPO法人を守る立場から、「非営利活動による所得(分配しない所得)を非課税とするのが税制の基本的考え方」と主張していたが、孤立無援であった。
 提起した税制の基本的問題については議論がされないまま、15年2月12日財務省担当官が私の事務所に訪ねてきて、次の会議(2月21日)に提出する未定稿を示した。それには、「新制度による非営利法人は原則課税」とあり、理由として、営利法人とのバランスが挙げてあった。激論になったが、彼らは絶対に譲らない。
 私は、このままでは次の会議で原則課税が固まってしまうと判断し、彼らにことわって、財務省の考え方と、これに対する私の対案(公益法人、NPO法人の本来事業非課税)を公表することにした。対案はこういう事態に備えて準備し、公益法人協会の太田理事長はじめ数名の識者に見せて賛同を得ていたものである。2月14日、財務省の考え方とこれに対する対案をインターネットで公表すると、20日までに162名の有力な学者や市民運動リーダーらから対案支持のメッセージが寄せられた。私はこれをまとめて21日の会議に提出、結局結論は出せない事態となった。松原明氏やNPO関係者が迅速に動き、3月10日、自民党から政府にストップがかかって、会議は結論を出せないまま終了した。14年3月の閣議決定で、15年3月中に結論を出すと決まっていたのに、これが守れなかったのは、政府にとっては大失態であった(私は税制調査会委員に再任されなかった)。しかし、この延期が、現行の原則非課税(本来事業非課税)への税制改正をもたらしたのだから、市民にとっては大成功であった。
 あとは、遺産寄付の税制を一般寄付税制と平仄が合うものにする宿題が残されている。

(公益法人「110年ぶりの公益法人制度抜本改革を総括するF」内 2014.10号 掲載)

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