政治・経済・社会
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提言 政治・経済・社会

更新日:2014年4月12日

戦争を遠ざける道
 集団的自衛権行使の是非をめぐり、「アメリカを狙うミサイルが日本の上を越えていくとき、日本はこれを撃ち落とせないのか」などという議論を聞くが、危ないと思う。ミサイルを発射すると想定されているのはまぎれもなく北朝鮮であるが、北朝鮮は、日本に届くミサイルを相当数持っている。
 そのミサイルで、日本に54基ある原発施設を攻撃してきたらどうなるか。
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 廃炉にしたあとも気が遠くなるほどの期間閉じ込めておかなければならない核燃料がむき出しになる事態。その影響が福島の原発事故の何層倍になるのか、そして私たちと日本がどうなってしまうのか、想像したくもない。原子炉をテロから守る方策を政府が検討していると報じられたことがあるが、テロの破壊力とは比べ物にならないだろう。
 つまり、日本は、稼働中であろうとなかろうと、もう核燃料棒をあちこちに持ってしまったのだから、これを攻撃されたら、原発事故をはるかに超える大被害を受ける国なのである。つまり、相手国が核兵器を持っていなくても、爆撃力さえ持っていれば、核の脅威にさらされることになる。
 このことを考えれば、日本は戦争はできない。日本国民の生命を考える政治家は、戦争の可能性を少しでも高めるような政治はしないはずである。
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 そこで集団的自衛権の議論に戻ると、アメリカを狙うミサイルを日本が撃ち落とすと聞いた北朝鮮はどう思うだろうか。
 アメリカを狙うときは、同時に日本の防衛力を奪わねばならないと考えるだろう。日本にはアメリカ軍の基地があるから、そこを叩くことは考えているだろうが、アメリカ軍に対する攻撃を日本の自衛隊が集団的自衛権の発動として阻むとなると、アメリカ軍基地に限定せず、日本全体がアメリカと一体だと見ることになるだろう。
 集団的自衛権の行使を認め、その体制を整えること自体が、そういう見方、扱い方をされるということである。
 戦争を想定して危険な事態を招く体制づくりに努力することよりも、戦争になるおそれを消していく努力をすることが、国民の生命を守るためにはるかに必要なことではなかろうか。
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 今回のウクライナへのロシアによる軍事介入問題からも判るが、両国間の経済関係が濃いほど、相互に武力衝突(国交断絶)を避けようとするインセンティブ(誘因)が働く。また、対立解決の平和的手段である経済制裁の効果も高くなる。経済関係が深まることは、両国民の生活に利益をもたらす。北朝鮮は貧しくひがみっぽい駄々っ子のようなところがあるが、ここは大人の態度で、経済的にウィンウィン(相互利益)の関係をつくり、包み込む方向で外交努力をするのが賢いやり方であろう。民間交流の努力はもちろんである。
 平和友好路線を進めるということは、もちろん、拉致をはじめ、違法行為や人権侵害を許すことではない。それが、国際社会への仲間入りをいかに妨げ、自分で自分の首を絞める行為かをしっかりと判らせながら、他方では、北朝鮮の施政者自身は成し得ないでいる国民の経済的安定を、国際的取引で実現していく。
 それが、着実に戦争のおそれを遠ざける道だと思う。

(「月曜評論」2014.3.17掲載)

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2013年12月19日 地域の時代
2013年 9月28日 住民の力を引き出そう
2013年 8月29日 社会保障改革の「宿題」
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