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定期連載 挑戦−幸福づくり
更新日:2005年10月6日
「協働」の法的仕組み


 行政とNPOとの協働事業が、先進的な地方自治体で広がってきた。
 好ましい現象である。行政は、行政だけでは実施することができない、きめ細やかな公益事業をNPOと協力して行うことができ、住民はそれによって利益を得、NPOは、住民のための事業を自らの発案で行うことにより、その存在意義を発揮できるからである。
 協働事業を進めようとする自治体は、条例を制定し、あるいは要綱、マニュアルなどを設けて協働の仕組みを定めており、多くは、その中で、自治体側が事業に必要な資金を負担することを定めている。
 問題は、負担の仕方であって、これを委託金と明記していたり、あるいは、明記していない場合も委託事業における委託金の支出等の手続きによって支出している例が少なくないようである。
 しかしながら、協働事業と委託事業は、両立しえないものである。
 協働事業の本質は、協働する当事者(行政とNPO)が、対等の立場で協議し、共通の目的を達成するため協力し合って事業を進めることにつき基本的に合意したうえ、相互にどのように協力するのかを中心として事業遂行の仕方につき協定していくことにある。そうするからこそ自発性をエネルギー源とするNPOの活力が生かされ、事業の実が上がるのである。
 これに対し、委託事業は、委託者が事業の内容を決めるのであって、受託者は委託者の意に従って事業を遂行しなければならない。事業の内容を決める権限はもっぱら委託者にあり、これについて委託者と受託者が対等の立場で協議決定するという構図はありえない。 つまり、行政が負担する資金の性質を委託金とし、その支出を委託金支出の手続きで行うという仕組み自体が、その事業の協働性の否定となるのである。
 委託は、民法上は請負、委任、準委任などの典型契約に当たるのに対し、協働は、あえて近いものを探せば組合であるが、これにも該当しない非典型契約である。行政とNPOが真に協働しようとするならば、旧来の方式によることなく、目的から手続きまで、すべて協議して両者間で合意し、協定書を取り交わすことが必要である。その場合に、行政だけが必要な資金を負担するという形ももちろんありうるが、NPOも資金を負担してよいし、また、協働事業である以上行政は、作業などを分担できる。分担するにふさわしい作業(広報、各種折衝やあっせん、場所の供与、職員の出向等)は積極的に分担するのが望ましい。行政が負担した資金は公金であるから公益事業である協働事業に用いられなければならないが、その限度を超えて資金の使途を細かく指定したり、すべての出金に細かく領収書を求めたりするのは、協働の本質を損なう。協働が委託と異なるゆえんである。  地方自治体と協働事業を行うNPOは、協働の名のもとに実は委託事業を請負い、安価な行政の下請者に墜ちることのないよう、当初の交渉段階で頑張ってほしい。

(『さぁ、言おう』2005年10月号)
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