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定期連載 挑戦−幸福づくり
更新日:2008年2月7日

居場所の公益性

 介護保険制度が定着し、身体を支えるケアが行き渡ってくると、人々は、心のケアを求めるようになる。「居場所」に関心が向き、自治体でこれを支援するところが出てきているのは、福祉の進化を示すものだといえよう。
  さわやか福祉財団も、ブロックによるネットワーク調査事業(その目的は、インフォーマルサービスの位置付けと拡大)を推進しながら、地域における居場所づくり事業にも重点を置いていくつもりである。
  そこで改めて「居場所」の意味であるが、それはただ「安心して居られる場所」というだけの意義ではない。たとえば引きこもりの人にとっては、自室又は自宅が唯一の居場所なのであろうが、私たちがつくり出そうとするのは、孤独な居場所ではなく、人と人が交わる居場所である。そこで、自分が客としてではなく、主体的に人と交わることにより、生きる意欲(自助の力)を高めるとともに、人との絆が生まれ、それがさまざまな形の助け合い(共助)に発展する。そこに居場所の意義がある。
  かつて地域の結び付きが強かった社会では、居場所は人々の本性によって自然に形成された。井戸端、縁台、境内、寄り合い好きな家の居間など、村や町内の居場所はいろいろな形であり、そこが情報交換、相談、苦情処理から協働、支援ネットワーク形成など、まさに現代の社会福祉士の役割がインフォーマルに果たされる場になっていた。そして、それは人々の自助と共助の力(人間力)を育成し、非公式な社会福祉や町づくりの基礎を生み出していたのである。
  私たちが居場所づくりに取り組むのは、そいうい共助の復活を望むからである。そして、形は何であれ、そういう場所(ハード面)を創り、維持するのは、現代社会では個人にこれを求めるのが困難であることから、行政がその面で支援するよう勧めるのである。それは、公園の設置など町の環境づくりよりもっと直接的に、住みやすい町をつくるのに有効な方策であろう。なぜなら、重要なソフト面の作業はすべて住民たちが自発的に行うからである。
  そして、そこで形成された人間関係は、助け合いだけでなく子育ち支援、学習、街の安全確保、介護予防、防災・緊急支援ネットの形成、引きこもりとそれに由来する孤立死の予防などなど、広く社会の利益(公益)を生み出していくであろう。
  居場所は、まことにインフォーマルな存在でありながら、それだからこそ公益性が高いことを、私たちは知っている。行政マンがそれを理解できるか。いい行政をやれるかどうかの分岐点は、そこにある。
(『さぁ、言おう』2008年2月号)
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