政治・経済・社会
(財)さわやか福祉財団ホームページへ
 
定期連載 挑戦−幸福づくり
更新日:2009年2月9日

ネットワークのつくり方

  尊厳を支えるケアを実現するには、フォーマルサービス(介護保険のサービスなど)と、インフォーマルサービス(ふれあいボランティアなど)とのネットワークが必要である。
  このことは、ふれあいボランティア活動をしている仲間たちは、わかっている。
  では、ネットワークをどうつくるのか。
  そこが、わかっているようで、わかりにくい。私たちは、ケアを必要とするすべての人について、それぞれの人が必要とするサービスの提供者たちが、個別のネットワークをつくるという姿を目指している。しかし、それをどのようにしてつくっていくか。
  ネットワークのつくり方には、決まった方式はなく、実情に応じて自由自在に、やれるところからやるしかない。そのことを大前提にして、財団がこれまでやってきたつくり方を、3つのタイプに類型化すると、次のようになる。
  一つは、下から方式(ボトムアップ)である。
  2001年に当財団の木原リーダーが、平塚でモデル事業として試みた方式で、当財団がビデオをつくってやり方を紹介している。
  講習会などで地域の人々に呼びかけ、何回か会を開いて地域の課題をあぶり出し、課題ごとにそれを解決する方策を見つけ出し、実現していくやり方である。ご近所の底力で解決できる課題もあれば、行政に投げる課題もあるが、かなりの課題は、行政と民間の事業者と地域の人々がネットワークを組んで解決することになる。そのもっとも成功している事例が、京都市の春日学区の住民協議会であるが、ほかにも、住民協議会をつくっている例は、かなり出ている。
  このやり方は、あらゆる課題がていねいに拾い上げられる点で、まさに住民のニーズに正面から対応できる方式であるが、成功させるには地域住民の熱意と努力が継続しなければならない。そういう地域は、日本では、残念ながら少なくなっており、人間関係の冷たい地域では、この方式は通じない。
  二つは、上から方式(トップダウン)である。
  これは、06年に当財団の加藤リーダーが酒田、佐久、大牟田など6市で試み、同時に全国のブロックで始めたネットワーク調査が目指す方式で、現在も精力的に継続している。要するに、まずその地域のインフォーマルサービスの現状と、それらのサービスとフォーマルサービスとのネットワークの状況を調べる。そして、尊厳を支えるケアのためのあるべきネットワークに比べて足りないところを明白にする。それをその地域の行政の責任者などに示し、その自覚を促して足りないサービスやネットワークの創出に努めてもらうというやり方である。
  これは、調査結果を示すだけで市町村が動き出すということが狙いであり、現に行政が動き出しているところもあるが、やはり行政まかせではうまくいかないことが多い。住民側でも呼応して動き、ネットワークの働き方を続けて形にしていくことが必要で、ブロックのインストラクターの方々の賢いフォローが必要である。
  三つは、横から方式(横串方式)である。
  これは、02年に当財団の丹リーダーが、千葉市を皮切りに全国各地を巡って始めた方式で、地域協同をうたい文句に、地域のインフォーマルサービスの提供者や社協、農協、生協などの関係者が集まって実行委員会をつくり、フォーラムを開催する。それを機に、実行委員会のメンバーを母体にして、横のネットワークをつくるというやり方である。07年に、安部リーダーがフレンズ連絡会と名付けてこの方式を引継ぎ、地域包括支援センターという、ネットワークの中核となるべき機関の人たちを引き入れた。そして、医師や行政マンなど広く関係者を巻き込んで、志あるサービス提供者のネットワークを各地につくりつつある。ネットワークの必要性を実感している地域の活動者の集まりであるから、いい形で動き出している地域が少なくない。もちろん、その多くに地域のインストラクターが入って、いきいきと推進している。
  どの方式になるにせよ、集う人々の心が通い、それが地域の人々の満足や感謝を生み出すと、ネットワークは活気づき、笑顔でつながってくる。実に有効に住民のニーズに応える社会保障のサービスが、ほとんどお金をかけずに、つくり出されていくのである。

(『さぁ、言おう』2009年2月号)

バックナンバー   一覧へ
 [日付は更新日]
2009年1月9日 介護現場の混乱と私たちの進む方向
2008年12月10日 経済の後退への対応
2008年11月10日 日本を変えよう
2008年10月8日 有効な政策提言
2008年9月10日 多様な能力を生かせる就業
2008年8月8日 東京砂漠の壁
2008年7月9日 これ以上社会保障費を抑えるな
  このページの先頭へ
堀田ドットネット サイトマップ トップページへ