更新日:2010年10月8日
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介護認定問題への対応
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市民団体から、要介護認定の廃止、あるいは3段階に簡略化せよとの意見が出ています。
私は、反対です。
ふれあいボランティアの基盤である介護保険制度が壊れては困るので、一万人市民委員会を足場に反対運動もしています。
まず、要介護認定廃止の主張の根拠ですが、この制度では介護の必要性が正しく認定できないから、サービス担当者会議でサービス内容を決めよということです。
サービス担当者を誰にするのかも大問題ですが、必要だと決められればそれを全部払うのでは、保険料を払う国民はたまりません。あっという間に、介護保険制度はもたなくなるでしょう。
ただ、この主張は徘徊する認知症者に対するサービスが不十分なことに対する不満が主たる原因になっているように思います。その不満はもっともなので、認知症者については特別なサービスを創り出し、地域で支える仕組みを組み入れる必要があると思います。
次に認定を簡略化して3段階にせよという主張の根拠は、事務の繁雑さにあるようです。
しかし、認定区分を何段階にするにせよ、当初の認定及び更新認定は必要なわけで、認定事務の量には変わりありません。また、認定区分変更に伴うサービスの変更も、認定区分の変更が正しく行われる限り、本人の現状に即した、本人のために必要な変更といえるでしょう。
ただ、実際には、区分が軽い方向へ変更された時には、従来のサービスが受けられない不満が生まれるでしょう。しかし、その不満は、認定区分の簡略化によって解消できるものではありません。
むしろ、認定区分を簡略化すると、大きな弊害が生じます。例えば要介護4と5を一本化してその中ほどに支給限度額を定めると、5の人は、必要なサービスを減らされます。これは大問題です。逆に4の人の中には、必要でないサービスももらえる人が出てきます。介護保険のサービス、特に生活支援は、自分でやれることであってもやってもらった方が楽だから、サービスがあるとつい楽な方向、つまり、自立と異なる方向に流れるおそれがあります。これは、本人にとってもマイナスです。
現行の認定区分は広い調査と分析に基づいて定められたもので、全体としては定着しています。そして、自立した本人は、少しでも良くなろう、軽い区分に移ろうと頑張っています。これをキメの粗いものにすることはマイナスです。また、依存性の人がもし軽い区分に移されると、その落差は大きく、大変な不満が出るでしょう。
このような理由で、私は、廃止にも簡略化にも反対ですが、もちろん、すべて現状どおりで良いとは考えていません。認知症者へのサービスの創出、整備はもちろんですが、事務の合理化や支給限度額アップの必要、尊厳の確保を目指したサービスの適正化なども、常に市民の声を聞いて検討し、より良いものにしていかなければなりません。
ただ、問題点には正しく対応することが必要で、間違った対応は事態を悪くしてしまうことに留意したいと思います。 |
(『さぁ、言おう』2010年10月号)
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