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定期連載 挑戦−幸福づくり
更新日:2010年 5月19日

「新しいふれあい社会の創造」へ
新公益法人の挑戦

みなさまに感謝
 新しく公益財団法人の認定を受けることができたのは、共に活動をしてきた全国の仲間たちや支援してくださった多くの方々の力により、実績を積み上げてきたからである。どれだけ有り難く、頼もしく思っているか、とても表現できない。
 みなさま、ありがとうございました。

ゼロから出発する決意
 新公益法人となっても、目指すゴールは変わらない。旗印は「新しいふれあい社会の創造」である。
 しかし、当初は新鮮な志と挑戦の意欲に溢れていた組織にも、活動を始めて18年が経過すると、マンネリズム、セクショナリズムなどの垢がたまり、厳しい挑戦に尻込みする風潮も時に見受けられるようになってきている。
 新公益法人として、ゼロから出発するということは、これらの垢などを削ぎ落とし、原点に立ち帰って理念と目標を見つめ直し、周囲の状況をしっかり確認して、新鮮な意欲をもって活動に取り組むということである。
 弛んでいる職員には厳しいムチを、いきいきと取り組む職員にはあたたかい励ましをお願いしたい。

旧目標の達成度
 1991年出発当日の目標は、「20年内に、全国にボランティア組織5000団体、1200万人参加」であった。ボランティア組織5000団体は早くに達成し、今、どの地域でも福祉分野のボランティアがきめ細かい活動を展開している。
 しかし、NPO活動と並行して創出されるべき地域活動(町内会単位の新しいふれあい・助け合い活動−当財団でいえば、居場所や時間通貨)が、未だ発展途上であるため、全国どの地域にも新しいふれあい社会が生まれているという実感からは、ほど遠い。
 ボランティア1200万人という目標も、数の上では達成されていると推測するが、現役サラリーマン層の参加がきわめて薄く、その点でふれあい活動参加層がいびつな構成になっている。

社会の現状認識
 活動を開始した当時に比べると、新しいふれあい社会に向け、状況は相当良くなっている。
 高齢者については、介護保険制度がスタートして身体面と基本的生活面で安心を確保する仕組みが定着し、そのお陰でふれあいや助け合いという精神面での充実感を求める余裕とニーズが生まれている。介護サービスや医療サービスの最終目標が「尊厳の確保」であるという認識が、行政や医療・福祉のサービス担当者にも広がってきた結果、それらのサービスをふれあい・助け合いなどのサービスと連携して包括的に提供する必要があるという認識も、ある程度広がってきている。
 子どもたちについては、行政は行きつ戻りつであるが、社会的には、その人間力を高めるため、共助(ふれあい・助け合い)の精神を育成する必要があるという認識も、生まれつつある。
 勤労者層についても、実感はまだまだであるが、ワーク・ライフ・バランスが必要だという声だけは社会に届くようになっている。

社会の課題と新公益法人の決意
 日本社会は、ふれあい社会(共助のある社会)に向かう気運は生まれつつあるが、経済至上、モノの豊かさ信仰の根は深く、その面での閉塞感に長らく覆われてきているため、価値観を転換して心の豊かさを重視する社会に脱皮するところまでには至っていない。
 先進国としてモノより人を重んじる社会に進展するためには、多くの市民が、モノに支えられる生活より、人とふれあって自分を生かし、人から認められる充実感を体験し、実感することが必要である。
 そのため、私たちは以上のような社会の課題に対応した新しいふれあい活動を全国展開しようと、心を新たにしている。

新公益法人の具体的な目標と手法
 これまでのような数値目標は掲げず、実質的に全国各地に新しいふれあい社会を実現し、より濃いものにすることを目標とする。
 その手法は、当初のように財団中心に全国展開する手法ではなく、方策をさらに進め、全国インストラクターが構成する各地のさわやかブロックと協働し、各地の実情とニーズに応じたきめ細かなふれあい活動を創り出していく手法とする。ふれあい活動創出の戦略は、基本的に、各ブロックが自立的判断によって立てることとし、新公益法人は、将来的には、戦略情報センターに移行する。
 当面、各地域のネットワーク調査とふれあい活動創出に向けた「上」(地方自治体)への働きかけ(加藤が担当)、各地のNPOその他サービス提供組織間の「横」のネットワークづくりの働きかけ(安部が担当)、地域のニーズを顕在化させ、住民相互の助け合いをうながす「下」への働きかけ(木原が担当)、すべての活動の基礎となる市民、住民のつながりを生む居場所づくり及び時間通貨の働きかけ(鶴山が担当)などの面で、財団は、各ブロックの要請に応じ、その事業を協働して行う体制を堅持していく。また、各地におけるふれあい社会創造の活動を支えるため、その地域における市民や企業などの寄付による基金をつくる仕掛けにも新しく取り組む(丹が担当)。

国等に対する政策提言
 国や地方自治体、福祉関係諸団体等に対し、現在のケアの体制と並ぶもう一つの体制として、いきがい実現の体制をつくるよう提言する。もちろん、ケアといきがいの創出は、しっかり連携して提供される仕組みとする。人は、ケアを受けるだけでは尊厳は保持できず、自らの能力を可能な限り生かして人から認められ、喜ばれてはじめて自己肯定感を確保できる。重い介護を必要とする人や認知症の人から自立している高齢者まで、すべての人がそれぞれのいきがいを感じられるよう支援するのは、ケアと違い、ボランティアや地域の人々である。その仕組みづくりを新公益法人の新規事業とする。

子どもやサラリーマンなど
 子どもの人間力の育成については、旧財団当時に、かなりのモデル事業を実施している。そのノウハウを整理し、放課後の学校開放を好機として、子どもたちが自ら人間力を育むよう地域をリードしていく。
 サラリーマンの地域活動参加については、名刺両面大作戦によって個々人の心情に働きかけ、「地域活動に参加しないサラリーマンは、仕事の世界においても、人間として恥ずかしい」という風潮を根気強く創り出していく。
 また、高連協その他の友好団体と連携して、認知症の人々を支える市民後見人の養成、子育ての地域支援の普及など、ふれあい社会の基礎を整備する運動にも積極的に取り組んでいく。

みんなで取り組みを
 みんなが、自分のできることを、みんなのために少しずつやれば、みんなが安心していきいきと暮らせる社会は必ず実現する。希望をもって、みんなで取り組みたい。そのため、新公益財団法人さわやか福祉財団は、一同心を一つにして新しい一歩を踏み出し、歩み続けていきたい。
 今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

(『さぁ、言おう』2010年 5月号)

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 [日付は更新日]
2010年 4月 9日 「いきがいの確保」を「ケア」と並ぶ柱にしよう
2010年 3月10日 つながって生きる遺伝子
2010年 2月10日 非営利・共助の社会を創り出す戦略
2010年 1月 7日 私は人生の主人公
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