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定期連載 挑戦−幸福づくり
更新日:2009年12月9日

介護先進自治体かどうか

 より良い介護保険にするために、地方自治体はどう行動すべきか。
 そのことを、地方議会に焦点を当てて、次のように書いた。月刊『地方議会人』11月号巻頭言に掲載されたものである。
 皆さんの足元ではどんな状況であろうか。進んだ対応をしている地方自治体があれば、ぜひお知らせいただきたい。モデル例として、他に広めたいからである。

地方議会の実力テスト
 介護保険制度は、地方自治体、特に市区町村の実力を試す絶好のリトマス試験紙であった。介護という、全国共通の身近な課題について、これを支えるサービス(給付)に対する住民の負担(保険料)を、市区町村が独自に決められるからである。
 その権限行使によって、市区町村は、どれだけ住民を満足させたか。
 その検証をしようとすると、地方自治のあり方に関するいくつもの問題が浮かび上がってくる。そして、その多くは、地方議会そのものの問題である。
 住民の立場から見た介護保険施行後の諸問題を見てみよう。
@地方自治体は、国が2回にわたって介護報酬の減額をするのを阻止できなかったか。
 ヘルパーさん不足のため求めるサービスが受けられず悲鳴が起きた原因をたどれば、小泉政権時代の社会保障費への聖域なき切り込みに行き当たる。ヘルパーさん不足だけでなく、いろいろな形でのサービスの低下が生じ、泣かされた住民も少なくない。その住民の泣き声を、住民にもっとも近い公共機関である地方議会は、なぜ国政に届け、悪政を改めさせることができなかったのか。
A住民が住み慣れた地域で暮らせるようにする地域密着型の諸設備が、なぜ増えていかないのか。
 地方議会は、智恵を出しているのだろうか。
B地域包括支援センターが満足に機能していない市区町村が少なくないのはなぜか。
 「包括」と愛称されるこのセンターは、地域における支援の情報センターであり、ネットワークセンターであり、何でも屋でなくてはならない。現にその機能を果たしているセンターは、地域住民の安心と信頼を獲得している。しかし、その重要性に気付かない市区町村も多い。地方議会人は、外国へ行く前に、先進自治体の視察に精を出すべきではないか。
Cなぜ夜間巡回サービスが増えないのか。
 コムスンがやっていた夜間巡回サービスがあまり継承されず、住民が困っているというのは、情けない話ではなかろうか。
D地域支援事業はしっかり展開されているだろうか。
 軽度の要介護者や特定高齢者、あるいはそれより前の段階の高齢者たちが、地域の助け合い、支え合いの中で、人生を楽しみながら暮らすことは、高齢者の人生の充実のためにきわめて大切なことである。しかし、そのための施策は一律ではなく、それぞれの地域における暮らしぶりや社会資源などの特徴に応じて多様であり、何よりも、住民の積極的参加がなくては成り立たないものである。そういう包括的な仕組みや風習を創り出す誘導は、行政職員には難しく、住民に密着した議会人の腕の見せ所といってよい。そういう方がどれだけおられるだろうか。
E福祉やボランティアのつくるケアネットに医療関係者を加える努力がされているだろうか。
 患者をトータルで支えるという意識の進んだ医師・看護師のいる地域では、医療関係者の入ったケアネットが形成され始めているが、全国的にはまだまだの状態であり、患者はコマ切れサービスに苦しんでいる。
 ケアネット形成のネックは多くの場合医師会であり、これを説得するには、議会人の熱意と智恵が有効であると思われる。住民のため一肌脱ぐことは期待できないだろうか。
 ほかにも課題が多いが、介護に関してここに並べただけでも、法令上あるいは事実上住民のために求められる地方議会人の責務は多様である。そして、その基本には、その地域の住民にもっとも適した介護保険の負担と給付を決めるべき責務がある。
 これらの責務を果たすためには、地方議会は抜本的に課題に取り組む姿勢をチェンジしなければならないと思う。
@介護にかかわる住民の本音をしっかり吸い上げる取り組みを続けなければならない。それを条例や予算に反映させ、住民を満足させてはじめて、「実力」が認められる。
Aサービスと負担のあり方が定まった時には、それによる住民の満足度はどうか、何が足りないか、負担ぶりは実質的に公平であり苛酷に過ぎることはないかなど、しっかり評価することが必要である。
 その上で、絶えず改善を進めなければならない。行政任せでは、住民の気持ちに応じるのは難しいであろう。
B住民から吸い上げた課題で国に提言すべきものは、地方が連携して問題を指摘し、キャンペーンする必要がある。そういう仕組みを創らなければならない。
 進んだ地方自治体では、首長が地方議会と組んで、上記@、Aの課題を実現している。
 そういう自治体が多数派になることが切望される。

(『さぁ、言おう』2009年12月号)

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