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定期連載 挑戦−幸福づくり
更新日:2009年10月9日

育ちをやめる子どもたち

 丈夫に生まれて健やかに育ち、素直で明るい子。親や先生の言いつけをよく守り、いつもニコニコとしていて、友だちの人気者。成績はずっとトップクラスで、運動会でも活発。
 そんな親の自慢の子が、友だちの意地悪を機に突如登校拒否。拒食症になり、親に暴言を浴びせ、時に暴れ回る。「安月給をはたいて塾やお稽古事に通わせ、いつも送り迎えまでしてきたのに」と途方に暮れる親。
 もう20年も前から、いまだに繰り返されている風景である。
 乳幼児の精神医学の専門家渡辺久子さんの『抱きしめてあげて』(太陽出版)は、そういった子どもたちの具体例に満ちている。
 いい子たちの心の中は実は不安いっぱいで、いつ親の期待に応えられなくなるかとおびえている。それに耐えられなくなった時、我慢の糸が切れてしまう。子どもの頭には、親や先生に評価されることしかなく、「自分」がいない。少子化で、大人に管理されることしか経験しない子どもたちの悲劇である。
 友だちと遊ぶ機会を与えられず、ゲームやテレビでしか楽しめない子どもたちの心の成長は、8歳から10歳の段階で止まってしまうと、柳田邦男さんが警告し続けている(同著『壊れる日本人』『石に言葉を教える』『人の痛みを感じる国家』いずれも新潮社)。情報の毒性は脳を直撃し、破壊するのだという。8歳から10歳の精神年齢の人間が、身体の方は少しずつ大人になって、高校、大学を卒業し、社会に出てくる。言動はむしろおとなしい人が、社会に適応できない事態に直面した時、突然切れる。おそろしい社会になった。
 これらの歪みを正す王道は、幼い頃しっかり親に抱きしめられながら、その安全基地を自ら離れて、仲間たちと交わる楽しみを覚え、やがて仲間との遊びで自分の力を発揮し、また仲間と協力して事を成し遂げる喜びを体得するという、自然な育ちに戻す以外にない。
 私たち人類は、何百万年もの間、そのようにして人間力を付けてきたのである。
 さわやか福祉財団では、長らく、子どもたちが人間力を身に付けるための支援に取り組んできたが、偏差値万能社会はなかなか変わらない。近々新しい戦略をまとめたいが、参考になる事例などお寄せいただければ嬉しい。

(『さぁ、言おう』2009年10月号)

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 [日付は更新日]
2009年9月9日 名刺両面大作戦
2009年8月10日 宅老所規制への対応
2009年7月9日 曲がったことはしたくない
2009年6月9日 謝礼金とふれあい活動
2009年5月9日 宅老所を不当に規制するな
2009年4月9日 ひとり生活応援プラン
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