更新日:2009年11月11日
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みんなで漕ぎ進める舟へ
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政権が変わった。
目指す「友愛社会」とは、「ひとつひとつの生命を大切にする。他人の幸せを自分の幸せと感じられる社会」だそうである。私たちが掲げる「共助」の理念に通じる。国がそういう理念を掲げるのは、おそらく初めてのことであり、良いことである。ただ、それを実現するのは私たち市民であり、国は、生活の基礎をしっかり築いて、私たちの活動を支えてほしい。
その視点からすると、子育ての環境づくりへの取り組みは、評価できる。自助の意欲を失わせるバラマキに走るのはよくないが、所得を適正に把握する仕組みができていないから、それまでの間、手当の支給などがある程度バラマキになるのはやむを得ないだろう。「一元的で公平な年金制度」というマニフェストの実現は、特に現役世代の不安を除去するために重要な施策であるが、難しい事業である。財源として消費税増税計画を示さなければならないし、全国民の所得を正確に把握するため、いわゆる国民背番号制を導入しなければならないだろう。そういう苦い薬を飲むだけの価値がある制度は、どんな制度か。その姿を、二つか三つの選択肢としてわかりやすく国民に示し、国民総参加の一大議論を巻き起こさなくてはならない。まず、その作業の工程表が出てこなくてはならない。
後期高齢者医療制度の廃止も同じである。廃止は簡単だろうが、それだけでは、今よりもっと悪くなる。保険制度を統合するというが、それなら、被用者について企業が負担している分はどうするのか。そういうことも含めて、これも、国民総参加の議論が必要である。年金制度、介護保険制度と併せて、一世紀の間は維持できる制度の骨格が定められなければならない。
その議論に数年が必要なことは理解できる。行程表に従って議論が進んでいけば、国民は、選挙で政権を支えるであろう。
そういう作業を進められるのは、官僚ではなく、政治家である。
そして、そういう基礎づくりがしっかり進んでいるという安心感があってこそ、国民、市民は、共助の社会、あるいは友愛社会を創るべく、励む意欲が湧いてくるのである。
世界の風まかせで漂う舟から、行方を定めてみんなで漕ぎ進める舟へと乗り換えたい。それが、政権を交代させた国民の思いであることを、しっかり自覚して作業を急いでほしい。
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(『さぁ、言おう』2009年11月号)
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