新年、昇る太陽は、あまねく、被災地をも照らす。
今年は、どこまで復興してくれるのだろうか。
そして私たちは、どれだけ復興に役立つことができるだろうか。
厳粛な気持ちで、今年も、腰を据えて、じっくり取り組みたい。
* * *
今年、被災地の自治体は、復興基本計画をもとに、誰がどこにどう住むかの具体的計画づくりに入っていく。
いよいよ町づくりが本番に入っていくのだが、これは大変な作業である。
大きな道路やJRの駅と軌道、住宅地域などはおおよそ決まった。それをもとに、学校、子ども園、行政の庁舎、警察署など、必要な公共の建物を配置していく。医療や福祉関係の建物も、なるべく早く固めたい。そして、問題の市(町村)営住宅である。ニーズ調査に基づいて、集合住宅や戸建住宅などを必要戸数建てることを決める。
このあたりから、一層頻繁に住民の意見を聞かなければならない。出来上がったものが気に入らなければ住民は住んでくれないし、その前に、気に入らないものをつくろうとしたら反対運動が起きて、計画はストップし、時間を空費することになる。
箱庭のような大きな立体モデルをつくって、決まった建物からミニチャーを置いていくと、問題点がみえてくる。
「この地域にデイケアが全然ないじゃない。これじゃおじいちゃん、おばあちゃんを見きれないよ」
「このこども園と小学校と認知症のグループホーム、くっつけたらどう?」
「集合住宅に集会所がないよ。それにヘルパーさんらを派遣する拠点、町全体を見たらまだ足りないよ」
などなど、さまざまな提言がいろいろな立場の人から出てくるだろう。理想をいえばそこに住むすべての人に立体モデルを見せて、次々と提言してもらいながら、仕上げていきたい。
絶対に避けなければならないのは、行政と専門家と有力者(地方議会議員や利益代表者)だけで決めること。地域説明会も、おやじが主に集まるようなものだけでは、必ず足りないところが出て来る。出来上がってから苦情が出、悔やんでも間に合わないのである。
私たちは、具体案づくりのそれぞれの段階に応じて、可能な限り、インフォーマルな住民復興協議を重ねてもらうことを応援する。そして、全世代のふれあい・助け合いを含む地域包括ケアが実現するようなまちづくりを後押しする。それが、子どもや高齢者を含むすべての住民に、安心のある心豊かな生活の基盤を提供することになるからである。
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それらの作業の過程で、いろいろな難問が出て来るだろう。
市(町村)営住宅建設予定の高台から、貝塚や古墳などが出現する可能性は必ずある。そのときは、埋蔵文化財としてどう扱うのか。
集団移転に関する合意ができない時はどうするのか。
農地の転用、森林開拓などに関する特区の手続きが、地域協議会における協議が整わないなどのため進まない時、どうするか。
所有地の買い上げ交渉が難航する時はどうするのか。
買い上げたい土地の相続の登記が何代にもわたって未了の時は、どうするか。
少し想像するだけでも、こじれ出したらニッチもサッチもいかなくなる事態がいろいろと予想される。
私たちは、専門家(おそらく、ボランティアの専門家)の力もいろいろと借りながら、住民たちの復興協議を後押ししなければならないことになるだろう。
大小さまざまな難関を乗り越えながら、その地域に最適の地域包括ケアの町を実現する。 長い、けわしい道のりであろう。
しかし、被災地の方々の安心なくして、日本の新しいふれあい社会の実現はない。
同じ思いの全国の仲間と手を組み、腰を据えて、じっくり取り組むことを、改めてお誓いする。
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