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定期連載 挑戦−幸福づくり
更新日:2011年10月12日

これからの介護保険制度のあり方

 介護保険制度は、2000年に誕生して以来、脱皮を繰り返し、前進し続けてきている。
 前進に大きな役割を果たしたのが、その年にスタートした介護保険推進全国サミットである。毎年秋に開催される本サミットは、厚労省老健局と全国の志ある自治体が協力し、全国から介護や関連分野のキーパーソンが集って、その時々の課題を大きな視点から討議することによって、改革前進の道を開拓してきた。
 私は、2000年、鳥取県西伯町で開かれた第1回サミットでは、「介護保険がもたらす助け合いの心」との演題で、「要介護者も、身体的自立や経済的自立については支援を受けても、精神的自立(ふれあい、いきがい)は堅持し、輝いて生きることが必要」と説いた。
 05年、岩手県遠野市で開かれた第6回サミットでは、「高齢者の尊厳と権利擁護」と題し、「認知症高齢者を法の暗黒領域から救うためには多数の市民後見人の養成が必要」と主張した。
 08年、茨城県東海村で開かれた第9回サミットでは、「新しいサービスの創造」という演題で、「居場所を含むインフォーマルサービスの創造と、関係サービスのネットワーク化」及び「施設の家庭化及び家庭の施設化」を訴えた。
 さて、本年の10月27日、28日に大分県臼杵市で開催される第12回サミットでは、私は、28日のパネルディスカッションに参加する。コーディネーターは大森彌東大名誉教授、他のパネリストは、「社会保障改革に関する集中検討会議」事務局を担当された内閣官房社会保障改革担当室長中村秀一さん、龍谷大学教授で介護の社会化を進める1万人市民委員会2010の政策委員池田省三さん、宮古市地域医療保健推進監坂本恵子さんで、オブザーバーは老健局長宮島俊彦さんである。
 私に求められている発言は、「これからの介護保険制度のあり方」である。そこで発言する事項として、サミット資料集に掲載するため寄稿したのが、次の文章である。
 このような方向に進めて行きたいと願っているのであるが、みなさんのご意見はいかがであろうか。

これからの介護保険制度のあり方(カッコ内は、私の立場)

1.当面の課題
(1)財政問題
(「社会保障改革に関する集中検討会議」委員等)

 下記(2)ないし(8)の施策を実施して介護保険制度及びこれに関連する制度をより国民のニーズを満たすものとすることにより、財政負担について国民の理解を得ること

 なお、下記制度改革に当たっては、負担者の視点に立って給付を合理化すること

(2)地域包括ケアの推進
(「『2015年の高齢者介護』高齢者介護研究会」座長、「24時間地域巡回型訪問サービスのあり方検討会」座長等)

 地域包括ケア及びその中核となるいわゆる24時間巡回サービスは、「最後まで自宅で自分らしく暮らしたい」という国民の尊厳保持のニーズに応えるもので、強力に推進すること
 あわせて、
 施設は、家庭化、地域密着化を進めると共に、地域への外付けサービスを担い地域の福祉情報センター機能を果たすものとすること
 ケアマネジャーは、インフォーマルサービスを含む各種サービスを包括する尊厳保持プランを立てること
 NPO等小規模な事業者は、介護保険サービスの質を高めると共に、地域で連携することによって、いわゆる24時間巡回サービスを含む地域包括ケアを提供すること

(3)認知症ケアの適正化
(「介護と連動する市民後見研究会」委員等) 

 認知症者の尊厳を確保するための基礎として、市町村による後見実施機関の創設、運用等により、市民後見人を飛躍的に拡大する等して、すべての認知症者に第三者後見人が付くようにすること
 また、認知症者の自由剥奪を最小限、きわめて例外的なものとするケア及び支援体制を、医療、福祉、地域及び家族らの協力によって実現すること

(4)人材の確保と養成
(「介護サービス従事者の研修体系のあり方に関する研究委員会」委員長等)

 高齢化に比例して介護及び看護の人材を増やすニーズがあることから、都市部における報酬増額、養成機関の充実、特に介護職におけるキャリア・パスの確立、非熟練者でも行える業務の類型化などを行うこと

(5)医療と介護の連携強化
(「医療改革国民会議」委員等)

 総合医制度の確立等により地域医療を充実すると共に、個々人の医療情報及び介護関連情報を1枚のカードにすること、また、地域医療機関と福祉機関の連携を組織化すること等により、医療と介護の連携を、各地域でルーティンとして行えるものとすること

(6)高齢者に適した住環境を整えること
(「『介護を受けながら住み続ける住まい』のあり方に関する研究会」委員長等)

 人生後半の住まい用として、地域に適した外部サービス付き高齢者(賃貸)住宅の普及を図ること
 子どもたちを含む地域の人々と交わる「居場所」の普及を図ること

(7)軽度者(軽介護、支援・予防等を要する者)に対する支援体制を、各自治体の責任で整えること

 軽度者に対するケアは、特に、ふれあい、いきがい等のインフォーマルサービスが、 自助努力を引き出し、効果を上げることが経験則として実証されているところから、地方自治体が、民間非営利、営利諸団体等と協働して、地域の実情や個人の特性に応じた多様なサービスを総合的、包括的に提供する体制を整え、その責任でこれを実施すること

(8)被災地の復興は、地域包括ケアの実現を目指すこと
(「地域包括ケアの町への復興応援団」発起人等)

 地域包括ケアの町

2. 中・長期の課題

(9)元気高齢者から終末まで一貫して尊厳を保持できる社会を構築すること
(「東京の地域ケアを推進する会議」委員長等)

 たとえば、
 地域包括支援センターに、その地域のすべての高齢者のいきがい、趣味、社会参加活動、医療、介護等の情報を一元的に集め、本人の社会参加やケア、認知症となった時の対応のため、関係者がこれを用いることができる仕組みをつくること
 地域包括ケアの体系に、ふれあい、いきがいの活動を組み入れること

(『さぁ、言おう』2011年10月号)

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 [日付は更新日]
2011年9月 8日 今が、その時である
2011年8月10日 緊急支援から復興支援へ
2011年7月 7日 24時間巡回サービスとふれあい
2011年6月 8日 地域包括ケアのある町への復興
2011年5月 6日 復興は「地域を施設に、そして家庭に」
2011年4月 7日 私たちは何をすればよいのか
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