政治・経済・社会
(財)さわやか福祉財団ホームページへ
 
定期連載 挑戦−幸福づくり
更新日:2012年2月9日

被災者の心に寄り添うということ

 昨年末、復興応援に入っている全国のインストラクターたちと、戦略会議を開いた。
 まず、復興状況を分析。
 今、被災地各地は、復興基本計画を確定するか、確定の最終段階にあること。復興基本計画が確定すると、住居地ゾーンへの移転計画を立て、実行に移すという第2の段階に入ること。現在、行政は、具体的な移転計画については白紙であり、これから精力的に住民の意見を聴くこと。しかし、復興基本計画について住民の意見を聞けていない市や町があり、そこでは、移転計画を立てる際、住居地ゾーン等の設定や防潮堤、軌道、駅、道路の建設計画など、基本計画そのものについて異論が噴出、復興計画が遅れるおそれもあること。

            *          *          *

 「ふれあい・いきがいを含む地域包括ケアのある町」への復興応援に取り組む私たちの活動は、第2段階から本番を迎える。
 どこの、どんな住宅に移るか。そして、そこへの生活サービスは、どのように行われるか。介護や医療のサービスはどうか。何よりも、そこでの住民の暮らしは、ふれあいや助け合いに支えられ、いきがいのあるものになるか。
 そういう町へ復興するには、住民の意向が確かめられ、復興を担当する行政等がこれを理解し、その実現を目標として、住民との協働で町づくりを進めることが必要である。
 それには、私たちはどうすればよいか。
 住民の意向を引き出すためのインフォーマルな協議の進め方と、その意向を行政に伝え、その理解を得る方策を中心に、戦略を議論した。

            *          *          *

 戦略は、モデル9市町の復興をめぐる諸状況に応じて異なる。
 石巻市雄勝地区や塩竃市浦戸諸島のように、過疎化が引き起こす問題もあれば、釜石市平田仮設のように、仮設に数市町出身者が混住しているため、仮設への仕掛けが復興に結び付かないという問題、南三陸町のように、行政に住民の意向を聞く姿勢が足りないという問題など、各地ともに、難しい問題が私たちの前に立ちはだかっている。
 しかし、私たちは、投げ出すことはできない。それは、私たちがふれあいを捨てることになるからである。

            *          *          *

 戦略会議の中で、「被災者の心に寄り添う活動」という表現があった。
 そのとおりである。
 被災者の心を大きく占める問題は、どのようにして普通の暮らしに戻れるかである。
 この基本的なニーズが満たされない不安は、時としてその人の生きる力を押し殺してしまう。
 その心に寄り添い、私たちが伴走していくためには、私たちは、進む道を間違えることなく、把握していなければならない。道なき道ではあるが、「地域包括ケア」という光はある。国も、「災害公営住宅」や「共生型複合施設」など、ふれあい・いきがいを含む地域包括ケアの実現に有効な支援策を打ち出している。それらのツールを活用しながら、被災者たちが少しでも早く、よりよい町でのよりよい暮らしに戻れるよう、後押ししていきたい。

(『さぁ、言おう』2012年2月号)

バックナンバー   一覧へ
 [日付は更新日]
2012年 1月11日 これからの復興支援
2011年12月 9日 これから、第2の山へ
2011年11月 9日 着々と、展開している
2011年10月12日 これからの介護保険制度のあり方
2011年9月 8日 今が、その時である
  このページの先頭へ
堀田ドットネット サイトマップ トップページへ