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定期連載 挑戦−幸福づくり
更新日:2014年3月12日

新しいステージ

 父親が働き母親は家事と子育てと同居の親の世話をするという形が標準的な家庭像であった頃は、家族も福祉を担う役割を果たしていた。しかし、日本も先進諸国の後を追って、夫婦共働きが標準像となってからは、家族に福祉の役割を期待するのは難しくなっている。 企業も厳しいグローバル競争の中で、その福祉的役割を最小限にする方向に向っており、行政も、なお進む高齢化に対応して増税に踏み切ったものの、社会保障の経費節減に努めるほかない状況にある。
 その中で、唯一福祉を担う役割の拡大が望めるのは、地域社会である。
 もちろん地域社会における助け合いは、専門的な技術を必要とする福祉のサービスは期待できないが、生活面で困っている人々と助け合うのは得意である。心がこもっているから、対価を得て提供されるサービスよりも喜ばれる。また、サービスを提供する側も、対価を得て提供する人よりも大きないきがいを得ることができる。地域には自分の能力を活かして人に役立ちたいと望む人々が多く潜在しており、これを社会で活用しない手はない。
 国もそのことを認識して、高齢者や障がい者の分野では、在宅重視、地域重視の方向で政策を進めているし、子育て支援や生活困窮者支援でも、地域の力を引き出そうとしている。
 しかし、地域社会は、そんなに急に何でもかんでも引き受けられるのか。
 現状では、「全国どこでもいつでもOK、どんとこい」とはとても言えない。行政が経費を負担して事業者にやってもらうのとは訳が違う。
 ただ、ここ数年、地域における助け合い活動は、あちこち花開き始めている。助け合いの絆をつくる居場所は、多彩な形で設けられているし、地区社協が力を入れている地域の見守り活動も、かなり広がってきた。日々の暮らしの助け合いも、自治会活動の充実という形と、新しく協議会などの名で地域の組織をつくる形と、2つの流れはあるものの、そこそこ見受けられるようになった。
 地縁団体によるこれらの活動は、地域で生じる課題であれば、種類を問わず、可能な限り対応しようとするものであるが、この活動に、家事援助、移動、配食など、種別を決めて対応しようとするNPO、社協、生協などの活動が組み合わされれば、地域社会は、ある程度の福祉的役割を担うことができる。
 そういう地域社会を全国に創り出すのは、一挙にできることではないが、それを目指して、全国の市区町村が、さわやか福祉財団のインストラクターのように、そういう社会づくりのノウハウと実績を持つ地域人材と協力して、地域の住民に根気よく働きかけていけば、何年かの間に、かなりのところまで実現することが可能であろう。
 それは、日本の温かい地域社会の新しい復活であり、私たちの生き方、暮らし方の新しい展開をもたらす。
 私たちが20年続けてきた運動は、今、第2ステージに入ろうとしている。
 先進少子高齢国でありながらブータンのように住民が幸せを実感して暮らす国になることを目指したい。

(『さぁ、言おう』2014年3月号)

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 [日付は更新日]
2014年 2月11日 新地域支援事業とインストラクター
2014年 1月11日 新しい一歩
2013年12月11日 新地域支援制度の設計
2013年11月11日 さわやかの3テスト
2013年10月10日 地元団体主体の活動へ
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