政治・経済・社会
(財)さわやか福祉財団ホームページへ
 
定期連載 挑戦−幸福づくり
更新日:2014年4月10日

原点に戻る

 インストラクターの方々に、新地域支援事業の説明をすると、1990年代から一緒にやってきたインストラクターの何人かが、「結局、私たちがやってきた原点に戻るということよねぇ」と感慨深そうに言った。
 あの頃は介護保険法はなく、私たちは、新しいふれあい社会を目指すボランティア活動を広めながら、身体が不自由なまま在宅で頑張っておられる方々のお世話もけっこう頼まれ、四苦八苦していたのである。
 「私たちは介護技術については素人なのだから、つきっきりで介護なんて無理だよ」というので、介護保険法の制定を働きかけ、それができたときは、「これで心の交流に重点を置いた生活のお世話に専念できる」と喜んだものである。もっとも、私たちの仲間の何割かは「身に付けた介護の技術も生かしたい」というので、介護保険の事業者になった。  5年後の見直しで、介護保険制度に要支援が加わり、私たちの仲間の活動は、生活支援から居場所へと重点を移し、制度が出来るまでは主流だったいわゆる有償ボランティア(謝礼金を伴うボランティア)や時間預託などの活動は、勢いを失ってきた。
 そこへ、今回の見直しで要支援者に対する生活支援を市区町村に移管し、NPOやボランティアにも頑張ってほしいというのだから、「原点に戻るのよねぇ」との感慨が湧くのも当然である。
 そうはいっても、1990年代のように、介護も引き受けてというのではない。介護どころかリハビリなど、技術についての専門的知識を必要とする身体的な介護予防についても、介護保険制度に残される。移管されるのは要支援者に対する生活支援(デイサービスや居宅サービスを含む)であるから、これは、1990年代に、まさに私たちが中核的活動としてやってきたことである。そして、当時から、要支援者に限らず、障がい者や生活困窮者、子どもたちについても幅広く対象としてふれあい、助け合いの活動をやっており、これからも、そのようにしてやっていけばよい活動なのである。というか、そのようにして幅広くやらないと、うまくいかない地域の活動なのである。
 まさに、あるべき形でふれあい、助け合いの原点に戻ることができる。介護保険法の実施という段階を踏んで、私たちの活動も、いい形にワンランクアップして元どおりの夢を追うことができるといってもよいであろう。
 原点に戻って考えるべきなのは、運営経費の負担についても同じである。継続的な配食や移送を行う事業運営の厳しさは分かるし、営利事業が生存に必要な食事や移送のサービスを提供しない時はその範囲で、受益者に負担させることができない運営経費を公費で負担するのは当然であるが、負担はその限度に止めるべきである。
 1990年代、私たちは、その範囲ですら私たちで運営経費を工面しようと、賛助会員による寄付集めにも相当な労力を注いでいた。互助の活動なのだから、寄付集めの努力は当然続けなければならない。
 その上で、基盤整備費のほか、運営経費についても、受益者負担させるのは相当でない部分は公費(税金または保険料)で負担するという考え方が出てきたのは進歩である。しかし、公費で負担すべき範囲を超える運営経費については、私たちは、もう一度心を引き締め、原点に戻るべきであろう。
 そうしないと、私たち自身の活動が、志を失い、活力を失っていくからである。

(『さぁ、言おう』2014年4月号)

バックナンバー   一覧へ
 [日付は更新日]
2014年 3月12日 新しいステージ
2014年 2月11日 新地域支援事業とインストラクター
2014年 1月11日 新しい一歩
2013年12月11日 新地域支援制度の設計
2013年11月11日 さわやかの3テスト
  このページの先頭へ
堀田ドットネット サイトマップ トップページへ