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定期連載 学びの時評
更新日:2005年12月13日
習熟度別学級 成功のカギ
  惨劇ともいうべき少年非行に走った生徒は、どんな中学校、小学校に通っているのだろうか。長野県真田町の教育長大塚貢さんは、資料を集め、自らも確かめて、一つの事実に気付いた。「花がない!」
  何となく学校が冷たく感じられるのは、どこにも花がないからである。
  それで、真田町の四つの小学校、二つの中学校で、生徒自らが土づくりし、種を蒔いて、花の苗を育てるようにした。校舎へと登る石段の各段ごとに、あるいは校舎や体育館の窓に沿って生命を輝かせる四季折々の花々。それがどれだけ生徒たちの心をなごませたことか。そして、それを植え、育てた生徒たちが、心の中でどれほどそれを誇らしく思ったことか。
  「命あるものを大事にする心を育てる」という目標はみごとに達成され、このところ、小・中学校を通じて万引きも非行もゼロである。しかも、全国規模で学力を診断するテストの結果が、私立を含めた全国の平均よりも、はるかに高い。
  人間性の育成と、教科の成績の向上。この、しばしば矛盾する目標を、真田町は、どのようにして達成したのか。
  心の教育の重視、厳しい教師の研修、生徒による授業の評価、保護者の評価、80%加入の学年を超えたスポーツ教室、地域の全面協力による職業体験学習など、真田町のプログラムには心躍るものがあるが、見逃せないのは、習熟度別クラス編成である。
  たとえば、文部科学省の基準では2クラス編成の場合、先生方の協力を得て3クラス編成とし、数学・英語は生徒たちの習熟度に応じてクラスをABCに分ける。これは危険な作業であって、Cクラスに入れられた者は時としてやる気をなくし、Aクラスの生徒をいじめたり、非行に走ったりする。ところが、真田町ではそういう現象はないという。
  「どのクラスに入るかは、生徒たちがまったく任意に、自分の意思で決めるからです」というのが答であった。
子どもたちであっても、自分で決めたことの責任は自分で取るのである。
(読売新聞掲載/2005年12月5日)
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