更新日:2007年7月24日 |
強い味方 |
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「お金の問題を解決するだけでなく、中国残留邦人らが心安らぐ、寄り合いの場所の設置が必要だ。たとえば、京都のエルファのような場所だ。」
私は、中国残留邦人問題を協議する厚生労働省の研究会で主張した。全委員がうなずいた。
鄭禧淳(チョン・ヒスン)さんが立ち上げたNPO法人エルファは、東九条など市内四カ所を拠点に、訪問介護からデイサービス、障害者や子育ての支援など、多彩な活動を展開するが、何といってもその特徴は、在日コリアンたちの心の拠り所になっていることである。
日本語が話せないのに戦後も故郷に帰れなかったコリアンたちの日々の不安は、言葉の通じない地域で暮らしたことのない私には、想像もつかない。そういう在日一世がエルファを訪れ、同様に年老いた仲間と出会うと、それだけで涙にくれ、ずっと手を握り合ったままでいるという。
「私たちは、差別とたたかう日本人からも下に見られているんですよ」という鄭さんの言葉に、胸を突かれた。
しかし、彼女たちは明るい。日本人の職員も、ひきこもりだったのが、勇気を出してここで働きだしてから元気になったという。デイサービスに来るハルモニらも、子どもたちと大声で笑い、遊んでいる。
そのエルファが、京都全域に住む外国人の高齢者、障害者たちの支援に乗り出した。京都モア・ネットという愛称で、市が助成している。
支援の相手はコリアンだけでなく、アメリカ人、スイス人などにも及んでいるが、やはり悲惨なのは、言葉も通ぜず、助けてくれる友人もなく、年金ももらっていない独居の高齢コリアンたちで、エルファがその強い味方になっている。
横浜のNPOも多様な外国人支援をしているが、エルファは群を抜いて頼もしい。 |
(京都新聞コラム「暖流」2007年7月22日掲載) |
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