更新日:2007年12月12日 |
孤独死と居場所 |
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高齢者の孤独死をどう防ぐか。福祉における究極の難問といえよう。これまでの福祉は、救いを求める者を救うという前提に立っていたからである。阪神・淡路大震災では、震災後10カ月目くらいから孤独死や自殺が出始め、何十人という方が亡くなった。仮設住宅の住人が多く、60歳前後の男性が多かった。現地でふれあいボランティア活動を展開していた仲間たちは、口惜しがったが、声を掛けても部屋から出て来ない人たちには、ボランティアも行政もなすすべがなかった。
引きこもりの高齢者を引き出すことは民生委員にとっても最大の難事である。彼らは理不尽な社会に怒り、すべての人に反感を示す。特に、権威を嫌い、干渉を拒む。
私は、応急対策として、「子どもを使うか、人好きなおばあさんを使おう。また、何かせよというのでなく、私たちのために力を貸してほしいと頼もう」と言っている。彼らの屈辱感に触れず、寂しさか自尊心に訴えようというのである。成功する保障はないが、うまく引き出せれば、「居場所」にいざなうのが有効であろう。
孤独死につながる引きこもりを防ぐ王道は、引きこもり状態になる前に、触れ合いの仲間をつくることであろう。引きこもりは、現代日本社会から共助が消失し、人間関係が冷たくとげとげしくなったことの直接的な結果だからである。
人と人とのつながりを取り戻す有効な方策の一つが「居場所」である。わが「さわやか福祉財団」も、「新しいふれあい社会の創造」という理念を実現するためのプロジェクトの一つとして居場所を広める運動をしているが、最近、居場所づくりを行う自治体も増えつつある。居場所で人間関係が生まれると、それは共助の復活につながる。共助の盛んな社会は住みやすく、生活の質が高まる社会だから、地域社会づくりのためのハード面での公的資金投入よりも、効果は大きい。介護予防にも緊急時の救助ネットづくりにも役立つ。
しかし、何より大切なのは子どもを含め、誰もが立ち寄り、いこい、人間関係を結べる場所にすることである。傷ついて引きこもる前に温かく触れ合える人や場所を知っていれば、孤独死に至るような事態にはならないであろう。 |
(時事通信社「厚生福祉」2007年年11月30日掲載) |
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