更新日:2007年7月24日 |
現場の窮状 |
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朝日新聞が去る7月10に報じた世論調査の結果には驚いた。世論の40%が、消費税引き上げは必要だというのである。
かつて、消費税をいうだけで内閣がぶっとんだ時代から考えると、想像も出来ない数字である。日本の国民の4割が、自らにふりかかってくる増税を肯定するとは!!
その消費税の使い道については、67%が、社会保障目的税だというのであるから、その気持ちは「社会保障が足りないから、それに限っては増税を我慢するよ」ということなのであろう。介護保険導入の際、世論の7割から8割が、負担を伴う導入に賛成したのに驚き、「そこまでせっぱつまっているんだ!」と感慨深かったが、今回は介護だけでなく、年金や医療、子育て、障害者支援なども含めて、「何とかしなければ」と思う人たちが、負担増の腹を決めたのであろう。
実際、社会保障の現場から、志のある若者や中堅職員が逃亡し始めている。もともと彼らは、高い給料や人並みの出世を望んだわけではない。勤務条件は厳しいが、それでも相手が喜んでくれる職場だから、そこそこに家庭が維持できるのであれば、この仕事に自分の人生を投入しようと心を決めて、資格も取って入ってきたのである。その心をすりつぶしてしまうひどい待遇をせざるをえない現状は、情けない限りである。
過日、福祉人材の確保策を論じる社会保障審議会福祉部会において、たたき台の案文に「良好な労働環境の確保」とあったのに対し、私は「『良好な』とはおこがましい。頑張って、まず『普通の』労働環境を実現すべきだ」と、過激な発言をした。担い手が逃げ出してしまってからの対策では、手遅れである。燃え尽きて失われた志は、容易に戻らないからである。
小泉総理は、歳出を切りつめられるだけ切りつめて、なお足りなければ消費税増税を考えるといっていた。政治姿勢として正しいが、もはや切りつめ過ぎだ。あまりにおとなしかった福祉の現場も、耐えかねてか細い声を上げ始めている。
追いつめられた弱者たちの声に即応できないような政治家は、危機管理能力を欠くと評するほかない。 |
(時事通信社「厚生福祉」2007年7月24日掲載) |
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