個人情報保護に関する一連の法令は、施行されるとすぐ各方面から不満の声が上がった。福祉、助け合い、防災などの分野でも、これらの法令が住民に対する支援を妨げているという現場の声は大きくなるばかりである。弊害の方が大きい悪法と評すべきであり、立法者は謙虚に反省して、法改正に取り組んでほしい。
これらの法令が国民の福祉を阻害する副作用を生じさせる基本的な原因は、個人情報のとらえ方を誤っていることにある。
そもそも情報は、活用するために存在するものであって、個人情報も同じである。ところがこれらの法令は、活用することを抜かして、保護(秘匿)することを目的とする仕組みをつくった。
そのため、個人情報はこれを秘匿するのが原則とされ、活用できる場合は例外として規定されることとなった。そして、活用できる場合は極めて限定され、国や地方自治体などと違って、民間が地域の福祉などを進めるため地域の人々の情報を集めようとしても、自分で直接集める以外はまず入手できず、また、集めた情報を他の福祉仲間に使ってもらうのも困難な仕組みになっている。
地域福祉や助け合い、防災などは、民間の非営利組織やボランティア、近隣の人々などが、平素から地域の情報を共有し、必要な時に、可能な限りシステマティックに動くことで成り立つ。行政も、そういう民間の人々の働きなくして、有効な地域の体制はつくれない。
そういう活動をしてくれる民間の人々を獲得するのも難しいところへ、個人情報保護の過剰規制があったのでは、行政も困るし、活動中の民間の人も過重な負担で活動を制約され、支援を必要とする人に手が届かないこととなる。
民間不信の発想を改めると共に、情報を本人のために活用することを原則とする法体系に組み直すべきであろう。現行法令のままでは、いくら解釈を拡大しても対応できない。
改正に当たっては、氏名など個人特定に関する情報と、人々が一般に秘匿を望む実質的情報(資産情報など)とでは、保護の程度を区別すべきであろう。また、使用目的を限定して情報を同意なしに伝達できる方途を構ずべきであろう。
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