更新日:2010年12月1日 |
最期まで自宅で暮らしたい |
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講演などで「自宅で最期を迎えたい人」と問うと、ほとんどの人の手が挙がる。そこで「本当に自宅で最期を迎えられると思っている人」と問うと、大抵の人が手を下ろしてしまう。
自宅で暮らすことによって得られる安心感は、「尊厳ある暮らし」の基盤である。
この望みに応えようと、田中滋座長の地域包括ケア研究会は、この4月に出した報告書で、24時間短時間巡回型訪問サービスの導入を打ち出した。その具体像を描くため、6月に「24時間地域巡回型訪問サービスのあり方検討会」が発足し、不肖私に座長の役割が回ってきた。
今の滞在型訪問サービスでは、食事や排泄を一人でできない人は、介助してくれる家族がいない限り、自宅で暮らすことができない。家族がいなくても、望み通り自宅で暮らせることとなってはじめて、尊厳の保持という究極の目的が達せられるのではないか。
しかし、どうすればそれが可能になるのか。
考えてみれば、施設や病院に入れば、介護・医療だけでなく、生活に必要なサービスはすべて提供される。ならばそのサービスを、在宅にも届ければよいではないか。
施設内部で提供されるサービスを外に出す。そして、集合住宅まるごと、あるいは中学校区内の住宅まるごと、施設にしてしまえばよい。
検討会では、現実に施設でどれだけのサービスが提供されているのか、面倒な調査をしてもらった結果、かなりの範囲で24時間巡回型のサービスを提供できることが見えてきた。
もちろん利用者によって異なるが、朝・昼・晩などの定時訪問で、食事、排泄その他の定型的なサービスはカバーできる。あとは転倒や失禁、痰の吸引など、必要に応じての訪問をすればよい。徘徊する認知症者など常時対応が必要な人、へき地に住む人など、このサービスになじまない人もいるが、例外的といってよい。
コストはある程度高くなるが、施設建設費を入れて考えると、安く済みそうである。
来年から試行に入る運びになりそうだが、住民の幸せを願う首長は、先駆者として果敢に開拓していってほしい。 |
(時事通信社「厚生福祉」2010年11月16日掲載) |
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