更新日:2012年5月17日 |
アウトリーチ |
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ドイツ人の福祉家を観光案内していたら「あの青いビニールシートの小屋にいるのはホームレスですね。日本ではあの人たちをあのまま放っておくのですか」と聞かれ、答えに困った。
ホームレスの支援を一生懸命やっているNPOの人たちがいる。まだ若い人たちが多い。
相談に来るホームレスの人たちは、いくつもの問題を抱えている。お金がない、住居も職も家族もない。病気はいくつもあって、認知症気味。
つきそって、まず生活保護の申請。病院に連れて行っていくつかの科で受診。市が用意している住居に入るまでの世話は、並大抵のものではない。行政も民間もしばしば迷惑顔で、何とか突き放そうとする。そこをねばるボランティアの若者は、時々考えるという。「自分は、いったい何故こんなことをやっているのだろうか」
当のホームレス本人が、やる気がないのがいちばんこたえるそうな。
日本の福祉の学者たちと話していると「これからの福祉にはアウトリーチが必要だ」という。
アウトリーチというのは、当事者からの申請を待っているのではなくて、こちらから出かけていって探し出して来るということだ。
確かに、もっと早く接触して福祉の対象にしていれば救えたのに、本人が引きこもってしまって誰も気付かなかったものだから、衰弱死してしまったというケースが目に付く。そういうケースが報道されると「早い時期からSOSのサインが出ていたのに見過ごした」という非難の声が出る。
まことにそのとおりで、地域の絆があれば、大ていのケースは救えたと思う。
では、ホームレスはどうなのか。路上や河原で寝ているということ自体が、明白なSOSのサインであろう。
そこでNPOの若者たちが善意で救おうとしているのに、多くの行政は迷惑顔である。言い分はあるのだろうが、これではアウトリーチどころの話ではない。
せめてNPOが嘆かなくてすむような対応をしてほしいのである。 |
(京都新聞「暖流」2012年5月13日掲載) |
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