更新日:2011年12月7日 |
地域一環ケアへ |
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「地域包括ケア」は、何とか姿を整え、これを実現する地域も出始めている。いずれしっかり根付き、国民のニーズを満たすであろう。
しかし、まだ手は緩められない。もうひとつ、大きな課題がある。
仮にここでその課題を名付ければ、「地域一貫ケア」とでもいえるだろうか。
要するに地域包括ケアは、地域における複数のサービス組織の横の連携によって、必要なサービスを包括的、有機的に提供する仕組みである。行政の縦割りの壁を越えて、福祉と医療、住宅が連携する仕組みである点が、画期的である。これによって、多くのケアを要する高齢者が、住み慣れた地域で暮らすことが可能になる。
せっかく尊厳を支える仕組みがここまで進んだのだから、この連携を縦の関係でも保つことができるものにしたい。
第二の人生に入った人が、最後まで住み慣れた地域で、その人らしく(つまり、尊厳をもって)生活し続けるためには、その時々に必要となるサービスが、継続して提供されることも必要なのである。
私が座長をつとめた東京都の会議の報告書「東京の地域包括ケア」(本年3月)では、その特徴の2として「身体的には概ね元気で、現時点では介護を必要としない高齢者も広く対象とした生きがい・ふれあいを重視した活動が、介護が必要な状態になってもそのまま継続しつながっていくことを目指している」と述べている。
対象となるのは生きがい・ふれあいの活動だけでなく、就業からケア、各種相談など、尊厳を支えるすべてである。それらが、本人の心身の変転に即応して、一貫性をもって提供される。
縦の仕組みの中核は、高齢者個々人の心身に関する情報の集積、一括管理と、その活用である。地域包括支援センターを情報センターとして、ここが情報の管理、運用に当たるのが適切であろう。退職後の地域活動や趣味の活動の情報は、認知症になったら重要な役割を果たす。
地域包括ケアは、一貫して提供される総合的なものとなってはじめて、真に人の尊厳を支えるケアとして成熟するのであろう。 |
(時事通信社「厚生福祉」2011年12月6日掲載) |
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