更新日:2012年9月20日 |
一緒にいる福祉 |
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昔から子どもとお年寄りは仲がよかった。子どもにとってお年寄りは自分を全部受け止めてくれる人であり、お年寄りにとっては子どもは生命の輝きであった。この関係は、今でも変わらない。
老人ホームと保育所などを隣接して設け、日常的に交流する試みは、20年以上前からあった。お年寄りはいきいきとし、子どもたちは成長する。
誰でも歓迎する居場所では、自然にお年寄りと子どもたちの交流が生まれる。障がい者も来るし、いやしを求める大人たちも来る。人は、年齢、性別その他もろもろの属性にかかわらず、自然と寄り合うようにできている生き物なのである。
福祉も、人を区分けする福祉から、少しずつ、人の本性に沿う福祉に進んできた。恵まれない人を救済する福祉Welfareから、尊厳を支える福祉Well-beingに進む大きな流れの中での当然の進歩である。ケアのベースに暮らしがあり、暮らしはいろんな人と交わりながら営なまれるものだからである。
その流れを施設でも受け止めようとするのが、共生型福祉施設である。高齢者も障がい者も子どもも、一緒に受け入れようというのである。この7月末に、厚労省の関係課長連名の自治体あて通知が出た。すでにあちこちで行われていることを全国に広めようというのである。
すでにはじめている事業者は、形にとらわれず、そこに居る人々のニーズや気持を受け止め、汲み上げ、柔軟な対応をしてきた人たちである。縦割りの社会の規制にさんざん邪魔されながら、何とかくぐり抜けてきた。そこへ厚労省が打って出て「共生型福祉施設」と銘打つのだから、これで自由にニーズを満たせるかと思うと、そうではない。既存の法の枠組みや予算の割りつけはそのままだから、そこは面倒な話が消えたわけではない。縦割りの壁は、そう簡単に破れるものではない。
しかし、厚労省の中で、「共生」の動きが一つの形になったことは、一歩前進である。これを全国各地、特に被災地で広め、「やっぱりこれでなきゃいかんよ。みんないきいきしてるじゃないか」という実感がある程度広まった時、やっと法令の壁も破れるのだろう。道を拓くのは、現場である。 |
(「厚生福祉」 2012年9月7日掲載) |
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