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提言 福祉・NPO・ボランティア
更新日:2012年7月26日
一緒に暮らす
 福祉は、世界の大きな流れを追って「尊厳ある暮らし」と、それを実現するための「自立した暮らし」を支える方向に進んでいる。具体的には、住みなれた地域で暮らし続けられる「24時間ケアに支えられる在宅福祉」の重視という流れがあり、また施設については「施設の家庭化」(家に居るのと同じように暮らせる施設)の流れがある。施設のユニット化、個室化にそれがあらわれているが、最近、施設の「共用化、複合化」という動きも出てきた。
 これまでのように、高齢者用、障がい者用、子ども用というように施設をタテ割りにせず、高齢者も子どもも障がい者も一緒に暮らす施設にしようという動きである。地域社会ではいろんな人が一緒に暮らしているのだから、施設もそうした方が自然である。一緒に暮らした方が、それぞれがその能力を生かして助け合い、いきがいを持って暮らすことができる。
 実際、ご近所で困っている人々の支援をしている方々は、ごく自然に、高齢者も子どもも障がい者も受け入れ、一緒に過ごしてもらっている。
 20年以上前からそういう活動を始めた富山市の惣万佳代子さんの「このゆびとーまれ」は、今や富山方式と呼ばれて地域に広がっている。静岡県では、このような共用型、複合型のサービスを「ふじのくに型サービス」と名付け、事例集も出した。
 高知県では、高知県立大学田中きよむ教授のリードで、高齢者や子ども、精神障がい者や引きこもりの人が交流する「とんからりんの家」(土佐町)や「なかよし交流館」(田野町)等が通所サービスなどを始めた。
 幼老交流の草分けである東京江戸川区「江東園」の杉啓以子さんが最近出版された「よみがえる笑顔 老人と子どもふれあいの記録」(静山社)には、高齢者と交わって子どもがどれだけ成長したかの実例がたくさん紹介されている。
 行政のタテ割りの壁を破るのは、住民の幸せを願う民間の力である。
(京都新聞「暖流」2012年7月22日掲載)
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