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提言 福祉・NPO・ボランティア
更新日:2012年12月12日
生活保護と尊厳
 格差がひろがり、生活困窮者が増えている。
 生活困窮者を救う最後のセーフティネットは生活保護であるが、生活保護の前に、第二のセーフティネットとして、就労支援や生活支援のネットを張ろうという検討が進んでいる。舞台は、社会保障審議会に設けられた「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」である。
 そこでの検討で出てきた案は、福祉事務所やハローワーク、NPOや社会福祉法人、生協などと民間企業が連携する官民協働の支援態勢をつくり、センターを設けて、引きこもりの若者、ニート、矯正施設出所者などの経済的困窮者や社会的孤立者を積極的に引き込み、個々に自立のためのプランを立て、社会的な訓練や中間就労(社会貢献活動)など多様なコースを経て、本人に適した就労などの社会的自立を果たそうというものである。
 若者支援、ホームレス支援、障がい者自立支援、自殺防止などのNPOと行政、社協などが協力して、本人に寄り添う形で柔軟に社会的自立へと支援していくという仕組みは、素晴らしい。あとは、言うは易い官民協働をどう実践するかであって、これは市町村と民間団体の責任であろう。
 問題なのは、第二のセーフティネットとされるこの生活困窮者支援と、第三のネットである生活保護制度とがうまく組み合っていないことである。そもそも、生活保護受給者であっても就労できる者は就労したいであろうし、就労できなくてもその能力を生かして何か人に役立つことをしたいと望むのは、尊厳ある生き方を希求する人の本性といえよう。その意欲すら失った者に対しては、人として生きる意欲を引き出すのが、あるべき支援の第一歩であろう。「この世の中に役に立たない人はいない」(エドガー・カーン)のである。
 とすれば、第二のネットと第三のネットは合わせて実施すべきものであり、生活保護受給者に対しても、寄り添って本人に最適な自立支援を行うべきである。憲法二五条による生存権の保障を受ける者も、十三条によって尊厳ある生き方ができるよう尊重されなければならない。生活保護は、尊厳の基礎となる経済的自立を補うものとして、全体的な自立支援の一つの面と捉え直せば、その在り方はより適切なものとなるであろう。
(「厚生福祉」 2012年12月7日掲載)
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2012年 3月15日 ケアマネは不要か
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