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提言 福祉・NPO・ボランティア
更新日:2014年4月23日
介護保険改革/ 高齢者支援 地域の輪で
 介護保険制度を改革するための法案が、今国会に提出されている。その内容で特に注目されるのは、高齢者が要介護状態になることを防ぐために行われている「予防給付」の一部を、市町村が実施している「地域支援事業」に移すことが盛り込まれた点だ。
 市町村の力量しだいで、高齢者が生き生き暮らすためのサービスを創り出すことが可能になる。地域再生の大きなチャンスである。
 まず、法案がどんな内容なのかを見ていこう。
 今の介護保険では、状態の比較的軽い要支援1、2と認定された人は、より重い要介護状態になるのを防ぐための「予防給付」を受ける。ホームヘルパーが掃除や洗濯を手伝ったり、施設に通ってレクリエーションをしたりといったサービスも行われている。事業所に支払われる介護報酬の単価なども画一的だ。
 一方、介護保険ではこの予防給付とは別に、必ずしも要支援の認定を受けた高齢者に対象を限定せず、体操教室や口腔ケアなど、市町村の裁量で実施する「地域支援事業」も行われている。今回の改革は、画一的な予防給付の一部を地域支援事業に移し、非営利の団体やボランティアの協力を得て、地域の実情に合わせて実施できるように変えるのが狙いだ。
 このように地域の力を福祉に導入するのは、費用(税金と保険料)が安く済むことが一つの理由である。だが、それ以上に、心温かいサービスで生活の質を高める狙いが大きい。サービスする方とされる方が互助の精神で絆を結べば、双方に生きがいが生まれる。
 ただ、市町村のやる気しだいで、サービスに大きな格差が生じかねない。まず問われるのは、市町村が「わが街を、住民が安心して暮らせる街にする」覚悟を持っているかどうかだ。その覚悟のない市町村は、急速に魅力を失っていく。
 地域の実情によって、必要なサービスは様々だ。空き部屋や公民館などを利用し、高齢者が楽しい時間を過ごせる「居場所」づくりに取り組む例も着実に増えてきた。心の交流を求める高齢者や子供などが寄り合い、自然に助け合いも生まれている。団地の自治会が高齢者の見守り活動を始めるなど、様々な地縁組織が地域の課題に対応する動きも各地で出てきた。
 市町村は高齢者のニーズを的確に把握し、支え合いの活動に参加するよう住民に呼びかける必要がある。退職した団塊世代の中には、ボランティアをしたいという意欲を持つ人も少なくないはずだ。こうした人たちの力を引き出せるかどうかが成功の鍵となる。
 また、厚生労働省は今後、市町村に研修を受けた有給の「生活支援コーディネーター」(仮称)を配置する。地域に足りない助け合い活動を創り出すことなどで、支援の輪を広げるのが役目だ。
 行政と地域が協力し、こうした仕掛け人の養成を急ぐ必要がある。私が理事長を務めるさわやか福祉財団も、これまで地域の仕掛け人を養成してきたノウハウを生かし、全面的に協力していきたい。
(読売新聞「論点」2014.4.22掲載)
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